「60.90問題」――初めて聞く言葉かもしれません。けれども、これはこれからの日本で確実に身近になる“新しい相続のかたち”です。
この記事では、60.90問題とは何か、そしてもしあなたやご両親がその対象になりそうであれば、どのような備えが必要か解説していきます。
◆ 60.90問題とは?
「60.90問題」とは、90代の親が亡くなり、その相続人が60代という状況を指します。
かつては「40.70問題」といわれ、70代の親を40代の子が相続するのが一般的でした。しかし、平均寿命が延びた現代では、子どもが定年退職した後に親の相続を受けるケースが急増しています。
その結果、次のような問題が起きています。
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相続人自身が高齢で、判断能力や体力に不安がある
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認知症などで遺産分割協議が困難化
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手続きの煩雑さに加え、身内も高齢化しておりサポート体制がない
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相続後に住む人がいないことで、空き家が増加
つまり、「60歳が90歳の遺産をどう扱うか」というより、「高齢者同士の複雑で孤立しやすい相続問題」が今、日本中で起こっているのです。
◆ あなたが60.90問題に直面しそうなら、どう備える?
「うちはまだ元気だから大丈夫」と思っていても、相続は“準備していたかどうか”で天と地ほどの差が出ます。今からでもできる備えを6つ紹介します。
① 家族会議を“今”開く
親が元気なうちに、「もしものとき」の考えを共有する場をもちましょう。実家をどうするか、誰が何を相続するか、事前に話しておくことが最大のトラブル予防になります。
② 生前贈与と遺言書の活用
相続トラブルの多くは「遺言がなかった」ことが原因です。専門家の力を借りて、法的に有効な書類で意思を残すことが重要です。
③ 成年後見制度の準備
親だけでなく、自分自身が高齢になってからの相続で判断力が衰えている可能性も。早期に信頼できる人を後見人として準備しましょう。
④ 実家の今後を考える
「誰も住まない実家」が空き家となり、管理・税金・劣化で家族の負担になります。売却、賃貸、リノベーションなどの利活用プランを事前に検討しておくべきです。
⑤ 財産目録の作成
相続手続きでは、資産が何か・どこにあるかが分かっているかが最重要です。不動産、預貯金、保険、借金など、リストにしておきましょう。
⑥ 社会資源を活用する
困ったら、自治体の相続相談窓口や無料セミナー、専門家の初回無料相談を活用しましょう。孤立しないことがカギです。
まとめ:相続は“未来の話”ではなく“今日の話”
60.90問題は、「親の相続を自分が60代になってから考える」では遅いのです。
相続を“親のこと”と思わず、自分事として早く動くことが、家族の未来を守る第一歩です。
そして住宅・不動産関連の事業者にとっては、この変化はチャンスにもなります。
**「人生100年時代の住宅」**をどう提案するか。今まさに、業界の知恵が問われています。
あなたのご家庭では、60.90問題への備え、進んでいますか?
次の休みに、家族で話し合ってみませんか。
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余談になりますが、このように60.90問題が進展すると、特に団塊の世代がそうなる時には、極めて空き家問題が深刻化することでしょう。 同時にこうした中古住宅のストックを良好な社会資本へとリノベーションされていく流れが要求されます。
※当記事は一般情報に基づいて作成しています。具体的な相続対策は、税理士・司法書士・弁護士など専門家にご相談ください。