「間取りごっこ」と
本格的なプランニングは違う話です。
ハウスメーカーで、営業マンがお客さんの要望を聞きながらその場で間取りを書いていく――
あれのほとんどは「間取りごっこ」です。
工務店でも、同じようなことが起きがちです。
「どんな部屋が必要で、どれくらいの大きさがいいか」を聞き取り、それをパズルのように平面図の上に並べていく。
これが典型的な「間取りごっこ」です。
まずは要望を全部盛り込もうとするので、建物のボリュームは大きくなりがちです。
例えば「洗濯干し場が欲しい」となると、そのためだけの専用スペースを必ずどこかに設けようとする。
1つの機能に1つのスペースを割り振る発想なので、「兼ねる」という考え方にならず、結果として面積だけが増えていきます。
面積が増えれば、お金もかかるし、室内を移動する歩数も増え、暮らしづらさにつながります。

収納不安が「贅肉だらけの家」を生む
物欲が旺盛な人ほど、「収納が足りないのでは」という恐怖感を持ちます。
その結果、シューズクローク、ファミリークローク、パントリー、さらにはサニタリー収納…と、
20年前にはあまり聞かなかったようなスペースが次々と登場してきます。
以前にも書きましたが、収納たっぷりなのに、リビングが4畳半しかないようなプランは考えものです。本末転倒と言っても良いでしょう。
本来、買い物をして家に持ち込むモノは、「買い換えるときだけ入れ替わる」くらいにすれば、
収納は一定量あれば足りるはずです。
モノの新陳代謝がうまくいっていないことに気づき、
その穴埋めとして、過剰に収納スペースを増やさないよう心がけたほうがよいでしょう。
洗濯スペースの矛盾
洗濯乾燥機の普及は目まぐるしいスピードで進んでいます。
それにもかかわらず、「広々とした洗濯干しスペース」を求める傾向が強いのは、
少し矛盾しているように感じませんか?
洗濯動線や家事負担を軽くするという目的自体は良いのですが、
「本当にそこまで専用スペースが必要なのか?」
「他の用途と兼ねられないのか?」
と一度立ち止まって考える価値はあります。
本当に暮らしやすいのは、短い動線
移動動線が短いほど暮らしやすい――これは原則です。
それなのに、特別に贅沢な空間があるわけでもないのに、
なぜか延床40坪を軽く超えてしまうような間取りは、
「贅肉まみれのダメなプラン」と考えたほうがよいでしょう。
平面図だけ見ていると、外とのつながりを見落とす
「間取りごっこ」は、関心が室内空間だけに向きがちです。
外との関係性が、ほとんど考慮されません。
本当は、2階の窓からは山並みがきれいに見えるかもしれない。
朝日を気持ちよく取り込めるポジションがあるかもしれない。
庭と大きくつながるようにすれば、同じ広さでもリビングがずっと広く感じられるかもしれない。
ところが、平面図の上だけで「間取りごっこ」をしていると、
こうした大事な要素を簡単に見落としてしまうのです。

本格的なプランニングとは?
本格的なプランニングとは、
・立体的なつながり
・外部(庭・景色・光・風)とのつながり
までを含めて考えられたものです。
最低限、「1階平面図だけで間取りを決める」のではなく、
敷地全体のレイアウトが分かる配置図をベースにプランニングすべきです。
当然、
「この窓からは何が見えるのか」
「どこから光や風を取り込むのか」
を考えながら、室内のポジションを割り振っていきます。

要望は“一石二鳥”で叶えられないか?
要望事項も、1つずつ専用スペースをつくるのではなく、
「一石二鳥にできないか?」と考えることが大切です。
たとえば「書斎が欲しい」という要望。
本格的なリモートワークで、毎日のようにZoom会議をする人であれば、
こもれる個室としての書斎が必要かもしれません。
しかし、多くの人にとっては、ダイニングテーブルを少し広めにして、
そこでパソコン作業をしたほうが気持ちよく、むしろ仕事がはかどる場合もあります。
リビングの一角にワークコーナーをつくるだけでも十分なことが多いのです。
「平屋ブーム」にも要注意
近頃は、なぜか「平屋がブーム」と言われています。
敷地にそれほど余裕がないのに、「まずは平屋にしなければ」と思い込んでしまっている人も見受けられます。
特に、子ども部屋が2つ必要な場合などは、
2階建てのほうがコストパフォーマンスも建物のまとまりもよく、
敷地の有効活用という点でも優れていることが多いです。
そもそも、個室としての子ども部屋をフルに使う期間は、せいぜい10年程度です。
子どもが巣立ったあと、余ったスペースが2階にあるほうが、
1階部分を無駄にせずに済みます。
「間取りごっこ」で要望をそのまま盛り込んだ家よりも、
・動線が短い
・外の景色や庭とつながっている
・面積に無駄がない
そんな家のほうが、実際の暮らしはずっと豊かになります。
図面のパズル遊びで終わらせず、
立体的なつながりと、外との関係まで含めて考えた「本格的なプランニング」かどうか。
家づくりの打ち合わせのときには、ぜひその視点で見てみてください。
