街の中で星と太陽と風をつかまえる家「網川原の家C」
街の中で星と太陽と風をつかまえる家「網川原の家C」
設計:塩谷 英一 監督:小林 秀昭
- コンセプト
- 「北極星が見たい」という施主の何となくの言葉から設計が始まりました。新潟市中央区の住宅密集地。都市型の小さめの敷地、北側に道路、他の三方を接近して隣家に囲まれ、南側には開放的な庭が確保できないという敷地条件から、北側に気持ちが向くのも自然のことなのかも知れません。それでも南側には、家と家との境界に生じる地面から空まで一気に抜ける程よいスケールの「隙間」がありました。この縦長スリット状の隙間は、向こうの街区まで抜けており、まるで都市の中に偶然生まれたビルの谷間のような風景というか、この敷地固有の魅力がありました。この隙間からは、冬の日射が入り、街区から街区へと風が通り抜けます。この隙間を日射や風をつかまえる機能としても、風景としても大きな手掛かりととらえ、積極的に計画に取り込みました。
いっぽう北側の正面についても、地面に庭を確保することができないため、北極星をひょいっとつかまえるためのスペースとして北側に生まれたいくつかの建築的な要素を「庭」へと読み替えました。地面から連続して空へと延びる左官壁、木造造作ガレージの屋根の上のデッキテラス、玄関ポーチ周辺などを「庭」として扱っています。近隣は同じ敷地条件のため、開放的な庭が圧倒的に不足している通りの並びの中で、少しでも街並みに何かしら「庭」の共有ができることを期待しております。
- 外観と庭
- 限られた敷地で2台分の駐車スペースと必要床面積を確保するため、建物の外形はL字型とし、それにより正面の北面にはL字による窪みと出っ張りが生まれました。地面で庭を十分に確保できないため、北面に生まれたこれらの建築的な要素を「庭」へと読み替えました。窪みには木造ガレージを置き、その屋根は5帖分のデッキテラスとし、北極星と直につなげています。出っ張りは左官仕上げ(そとん壁)とし、北壁には北極星が見える窓を設けました。窓には小庇を設け、正面道路から18度回転させて北極星の方角を示しています。小庇も「庭」ととらえ、壁と一体的に左官で仕上げています。夕方には北壁に西日が当たることで桜色の壁が出現することも期待しています。玄関ポーチは、出っ張りの箱を穿いて人を招き入れ、周辺には施主が拾ってきた石をゴロゴロと散在させて置いています。施主が実に謙虚に控えめに求めた「北極星が見たい」を端緒としたこの家が、北庭を介して街並みと静かに関係を結ぶことを試みています。
- 内観
- 南側の隣家と隣家との境界に生じる程よいスリット状の隙間に面して、一つの吹抜けをつくりました。これにより2階の掃き出し窓が高窓となり、空が見え、光と風が通ります。ここを主室としました。三方を隣家に囲まれてはいますが、隣家の庭や隙間といった都市的な「空地」を室内に取り入れることで、明るく開放的で風の通る場が生まれました。1階のトイレは施主のDIYによる左官仕上げです。2階の天井は勾配天井とし、屋根の形が素直に分かるようになっています。
- 素材
- 解体前の家の和室で使われていたカリンの床柱を処分せずに救出しておいたものを、大工棟梁に頼み、手摺材として再生させています。北極星の見える2階北面の和室には、小須戸の新発田屋さんの木材倉庫から施主と一緒に選んだ無垢の一枚物のカウンター板を使用しています。1.5m四方の窓面に据え付け、この板も18度回転させて北極星の方角が分かるようにしています。板材は三角形になるため、カットしたもう半分の相棒の三角形の板は、窓上部の小庇の軒天として使用しています。
玄関ポーチのアプローチには、施主が若い頃に自ら糸魚川の姫川で拾って大切に保管しておいた石を埋め込んでいます。姫川の石は古代から航海者の道標や守り石として用いられた歴史があり、同じく古くから旅人や船乗りの不動の目印として存在した北極星とも共通することから、なんだかここには家族が帰ってくる場所としての意味が出てきているような気がしています。施主は「石を拾い、星を観る人」でした。宮沢賢治は岩手の自然で森羅万象を感得して銀河鉄道を構想しましたが、この家にも宮沢賢治の世界観が感じられるのかも知れません。
- 規模・性能
- ■敷地面積 41.1坪(136.14㎡)
■延床面積 36.5坪(120.89㎡)
■Ua値:0.34 W/㎡K
■Q値:1.2 W/㎡K
■C値:0.3 ㎠/㎡
■太陽光パネル:6.6 kw
■長期優良住宅認定
■耐震等級3
■木造在来工法二階建て
■床下エアコン暖房+壁掛けエアコン冷房










































