収納がいっぱいの家の罪

造作家具を多用すると、住宅は短命化

置き家具は世代が変わってレイアウトを換えることも出来ますが、作りつけはそうはいかない。

ヨーロッパの住宅も、中までおじゃましたことはありますし、住んでもいたが、日本家屋とは違い、まるでドア一枚あるだけの「ルーム」という印象で実にシンプル。例外的にマントルピースがあることはありますが、日本と違って押入れすらありません。だから、クロゼットやキャビネットという家具を買って収納をします。畳が無いからソファを買う。つまりは置き家具が生活を支えているのです。

日本人は、押入れという建物に収納を作る文化があって、室内が和室でなくても造作して収納は作るのだと思い込みすぎているのかもしれない。建物に収納を作って欲しいと望む土壌があるわけです。

さらにそこに、「坪いくら」などというドンブリの価値観が住宅に入り込むから、いっぱい作ってもらえば徳だと思う人がいるわけです。

以前 売れ残りの中古住宅を見に行った時の話ですが、驚いたのが、LDKのありとあらゆる壁が安手の塩ビシート張りの造作家具だらけ。本棚なのか装飾棚なのか用途がよく分からない味気のない代物は、住宅の一部だが、はっきりいって作った本人以外はゴミでしかない。

住宅にすべてを盛り込もうとして、ちまちました収納を家中に作ってしまい、用途を限定して逆に使えなくなるという現象です。

「これは売れないわけだ」と分かりました。きっとあの住民は「収納病」の奥様がお住まいになっていたのだと思います。

それに加えて、モノを捨てられないタイプで、生活にどれほどのモノが必要かの哲学の無い人は、無限に収納を設けても十分には思えなくなる。これは物理学よりも心理学の領域に入るので「収納病」と呼ぶれる、恐怖心で、 どのように暮らすかを度外視して、収納を住宅に盛り込もうとする。

そうならぬようには 哲学が必要。 世界的ベストセラーが、こんまりさんの本がおススメです。

家を作る前に必読書です。

似たような主旨で 少し昔の話です。

木造ハウスメーカーに I工務店というのがありますが、ウリの一つが、

「出窓はいくらつけても標準仕様です」というのがありました。おまけに室内側から見れば出窓の下は収納になっている。なんと俗っぽい心理をうまく付くセールスポイントだと感心します。

いっぱいつければ得した気になる。「収納病」の方にはたまりません。そのような売価のルールではどうしてもデコラティブになり、建物の内部外部がグロテスクになっていく。でも哲学がないと気付けない。

結局、住宅売価は製造原価を踏まえたものだから、作りこめばコストは当然反映してくる。これは極端な住宅のケースですが、造作収納を今一度冷静に考えましょう。

「その収納は必要ですか?」

「置き家具でいいのじゃないの?」

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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