断熱等級7に挑む住宅 

admin

10月1日より断熱基準の上位等級が正式にスタートいたします。
それに呼応するのか、日経アーキテクチュアは「断熱等級7に挑む」のタイトルで特集を組んでいます。

 

等級7を実現している先導的な事例を紹介

今回の上位等級制定での中心的な人物、北総研の鈴木大隆氏は等級7に関して、
2050年まで目標として残る高い水準で、技術革新を促すための基準。普及させるにはもっと性能の高い建材が開発され、価格もこなれて、設計や施工の方法が開発される必要がある。」としている。

つまり、ここで紹介されている、等級7の性能の住宅をすでに手掛けている方々は、未来基準を先取りしているトップランナーであるわけですが、名前の出ている皆さまは、私らと仲良くさせてもらっている方々ばかりです。

Ua値0.18の雪国ハーフ住宅 サトウ工務店の事例

新潟からはサトウ工務店の雪国ハーフ住宅の事例が紹介されています。
徹底的に断熱性能に予算を集中投下して、Ua値0.18を実現。
多分、本州で建てられた住宅の中では最も外皮性能が高い事例であるだろう。

それを実現するために建物面積を80㎡=24坪とかなり小さくしている。
このプランの積算数値をもとに、級5から6、7と上げていくに従って、断熱工事費用が上昇していくか表にまとめている。
等級5(Ua=0.6)192万円 等級6(0.34)235万円 等級7(0.18)405万円
5地域ではUa値0.26でも基準を満たすが、その上の等級8がもしあれば達成しそうな性能。

断熱工事費は増加していくが、年間の光熱費は下がっていく。
その工事費の増加が、下がった光熱費で何年で投資回収できるか?
等級6の場合は7.9年。等級7の場合は22.7年とされている。
35年ローンを組んだ場合は、一生涯のコストで考えれば断熱性を高くした方が安いと主張している。単に光熱費で元が取れることだけでなく、断熱性能を上げた分だけ建物内部の温度差が解消されるために快適性が向上する。

また、等級6から7へのUPで、建築費が170万円UPしたが、
家を小さくすることで総額を抑えている。
総額が3000万円で決まっているのであれば、等級7で24坪とするか、等級6で26坪とするか?
大きさで調整するとなると、これくらいの差になりそうである。

この方の場合は、子供2人の標準家庭で無いから「大きな家はいらない」との判断という。

このように等級を上げるとコストがどう変化するのか? そして何を優先するのか?
情報が揃ってくると作り手も住まい手も、判断に悩むことが無くなってくる。

サトウさんとは、「大型パネルの解説動画」で対談している。
大型パネルは、高性能時代と大工さん不足の切り札とも言える技術で、
わたしたちも否応なしに今後は増えて行きそうです。 (寄り道でしたが)

2番目がアーキテクト工房ピュアの事例


愛媛県松エリアは北海道と同じようにロックウールが安価に使えるので非常にうらやましい。天井を300mmで使っているが、高い比重のおかげで、熱帯夜の夜、2階の寝室は快適であるだろう。
外壁の付加断熱をビーズポリスチレンフォームを用いて、塗り壁の下地材として用いて、一石二鳥の効果を狙っているのが特徴です。

左官仕上げは、木の板やガルバリウム外壁と比べて、2倍程度の割高になるのであるが、一石二鳥の効果で価格上昇分をかなり解消できている。(それでも塗り壁は、やっぱり高いことでは変わりないが)松尾設計さんでも同様の方法は多用していていて、塗り壁の一つの合理的な答えだと思える。しかし、昨今は左官職人の不足感が尋常でなく、そちらの方がボトルネックであり、塗り壁を増やしたいけど無尽蔵にはできないってのが悩ましい(脱線失礼)

3番目が i+iの飯塚豊さんと夢建築工房のゴールデンコンビ


夢建築工房の岸野さんは、日本エコハウス大賞の審査員も務めていて、断熱施工に関しては業界トップクラスのノウハウがあると目されている。
住宅設計の名手である飯塚さんとのコンビで、Ua値 0.25の最高等級の住宅を作ってしまった。性能とコスト、またプランニング、ディテールの配慮まで、全てに渡って文句のつけようのない完璧な事例だ。 飯塚さんも我々とのコンビで手掛けた、「笹口の家」が本格的な高断熱高気密住宅の処女作であったが、あっという間にもろもろを理解されていて、完全消化しきっている。

付加断熱の施工上の注意点

オガスタ新潟の断熱気密の施工マニュアルを作っていただいた、環境プランニングの古川さんから施工上の注意点が紹介されている。 これは読者の実務者に役に立つ内容です。

今まで高性能住宅を、特に「付加断熱」については、技術的なハードルが高く感じている住宅会社があって、これを超えられないと上位等級にはたどり着けない。「付加断熱」の急所がコンパクトにまとまっていて、チャレンジしたい人には必見のページになります。

 

大手ハウスメーカーの上位等級の対応

大手ハウスメーカーの対応についてもまとまっている。
結論としてはZEH基準である等級5は標準的に対応可能だが、
等級6以上での対応が可能だとするのは木造の住林のみとなり、
5地域以北で、オプションで対応可能とするのが旭化成ホームズ・大和ハウス・桧家住宅に留まっている。

最上位の7等級には、全ての会社で対応はできていない。
大和ハウスが2022年10月に最高等級で対応する商品を計画しているとあるが、
鉄骨構造だと熱伝導が木と鉄では800倍違うため無理だと私は思う。
なので木造で大型パネル等を用いて専用の商品として発表するのではないか?
ミサワホームも計画があるとしているが、これも同様に付加断熱のパネルの商品で可能なのだろう。

こういった量産型住宅は、ある程度の販売が見えないと商品設定しにくいし、営業マンとしても、高額設定となると売れにくいので、積極的にお客さんには推すことはしないだろう。

余談ながら、新潟においては、某鉄骨系ハウスメーカーでは坪単価160万円で建売を販売しているが、その住宅も等級5(0.6)ということなのか? 断熱性能関係なしで順調に売れているようです。ブランドとは消費者を盲目にさせる、すごい力があることに驚くしかありません。

等級7でどれだけコストが上昇するのか?

日経BPでも3 ×5間の30坪、総2階のベーシックな住宅プランを用いて、
性能が上がることでどのように建築コストがアップしていくかを試算している。
6地域において、起算を等級4の義務化性能をベースにしていて、ZEH基準の等級5(0.6)ならば30万円UP。等級6(0.46)であれば、等級4から55万円のコストアップで可能だとしている。

最上級の7(0.26)までアップするには、さらに140万円アップするとの結論になっている。合計で4から7までで約195万円のアップである。
しかしこれは工事の原価UPであるようで、施工店の粗利が乗ってきて、お客様負担でみれば÷ 0.75 とするならば、260万円のコストアップとなる。

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断熱性だけのいい家はいい家なのか?

ざっくり言えば、坪10万円アップすれば、激安ローコスト仕様の建売クラスが、
最高等級の断熱グレードになると思えば良い。
つまりこのプランを企画化して、他の建材や設備もローコストグレードで全てまとめれば、コミコミ2000万円の商品が出来上がるとして、それを等級7にして2300万円で入手できる可能性を示唆している。 いわば「断熱性だけが良い住宅」の可能性です。

それを狙った設定のパワービルダーがこれから出没してくる事は間違いない。
つまり、一般ユーザーが、断熱グレードの上下だけで、建物が良いとか悪いとか言っているところを逆手に取った販売戦略がすでに生まれてきていると考えられる。

等級7へ行く前にやるべきことを確認しよう

さらに言えば、上位等級に関しては、Ua値とηAC(冷房期の平均日射熱取得)を対象としているのみであって、実際の家計の光熱費に直結する「冷暖房燃費性能」とは異なる点だ。

新住協においては、各要素での建築費UPでどれだけ燃費向上していくか。
そのコスパのよいものから積み上げていくべし、としている。そのためにQPEXソフトの供与が会員にはされている。
計算すれば分かることであるが、外壁付加断熱よりも、5地域であれば、1種全熱交換のほうがコスパがいいし、6地域以南では冷房負荷が小さいので、投資回収期間がより長くなるが、夏の湿気対策に寄与してくる。

新住協のQ1.0住宅の性能と燃費についての記事をリンク張っておきます。

また、近頃、軒ゼロ案件で、夏のオーバーヒート予防で、南の開口部を遮熱タイプのガラスを「感覚的に」選択しているケースもあるし、Ua値向上のために積極的に窓を減らし小さくしているところも見受けられます。

外皮性能ではなく、やはり燃費性能が大事なのは言うまでもなく、
邸別の細やかな仕様選定と設計の配慮をシュミレーションしながら決定していくことが重要でしょう。

PVの搭載も含め、やるべきことを下からクリアしてまだ余力がありやってみたら最高等級になった。というのであればよいでしょう。この上ない快適性が待っているわけで、是非挑む価値がある。

しかし、飯塚さんと夢建築工房の事例の写真を見ていただければわかるけど、良質素材や内部・外部の空間の魅力であったり、豊かさは熱性能だけでは決まりません。
性能のその先に本当の快適さはあるよと、声を大きくお伝えしておきたいところです。

 

 

 

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