なぜ工務店は「新築専門」と「リフォーム専門」に分かれているのか?
街を歩いていると目に付く看板や雑誌を見て気がつくことですが、
「新築専門の工務店」と「リフォーム専門の工務店」に別れていることが多い。家づくりを考えている人の中には、「なぜ工務店は両方やらないのか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。
実は、新築とリフォームはビジネスの時間軸の違い、技術面での違い、そして顧客のニーズの違いという3つの大きな価値から、分業が進んでいるのだ。
①ビジネスの時間軸の違い
まずは、新築とリフォームでは、ビジネスの時間の流れが大きく異なります。
新築は、土地探しから設計、施工まで、数ヶ月〜1年以上の長いスパンで計画が進むことが多い。顧客が家を決める決断をするまでにも時間がかかるため、長期的な視点で経営をする必要がある。
例えば、給湯器が壊れた、壁紙を張り替えたい、屋根の修理が必要といったケースでは、すぐに対応できることが求められる。 特に、雨漏りや水回りのトラブルは「一刻を争う」こともある。
つまり、新築工務店とリフォーム工務店では、経営の時間軸が大きく異なるため、それぞれの専門店として独立した方が効率的になるのだ。
② 技術サイズの違い
「同じ家づくりなのだから、新築もリフォームも同じ技術でできるのでは?」と思われがちですが、実際には大きな違いがあります。
新築工事の特徴
- ゼロから設計し、自由度が高い
→実施主の要望をもとに、一から計画を作るため、保留が少ない。 - 施工の流れが計画的
→土地の造成、基礎工事、建築と順に進められるため、作業効率が良い。 - 建築知識の高度化
→高性能化の流れで、耐震性能と断熱性能を数値根拠を提示して証明する必要が出てきて、設計者の専門性が要求される。また、プランニングや不動産、資金など関連知識も幅広く必要だ。
リフォーム工事の特徴
- そこの建物に合わせる必要がある
→ 古い家の構造を理解し、対応しなければいけないため、新築とは違うノウハウが必要。 - 解体してみないと気づかないリスクがある
→壁が出てみたらシロアリ被害があった、思ったより柱が傷ついていたなど、現場での判断力が求められる。 - 施工スペースが制限される
→住みながらリフォームするケースも多く、養生や安全管理に気を使う必要がある。
かなりの技術の違いから、新築を専門にする工務店と、リフォームを専門にする工務店とで、職人のスキルや工事の進め方が大きく変わってきます。そのため、どちらかに特化したほうが、より専門性を高められるのです。
③ 顧客との関係
新築を考える人、リフォームを考える人では、住まいに求めるものが根本的に違います。
新築を考える人のニーズ
- 理想の住まいをゼロから作りたい
- 家族のライフスタイルに合わせた間取りにしたい
- を見据えた長期的な住まいを建てたい
新築の顧客は、「どんな家にするか」を一から考えるために、時間をかけてプランを作り、デザインや性能にこだわる人が多い。
リフォームを考える人のニーズ
- 今の家をもっと快適にしたい
- 古くなった部分を修繕・改善したい
- とりあえず・低コストでとりあえずしたい
リフォームの顧客は、「今の家に不満があるから改善したい」という現実的な理由が中心です。コストや工期を重視する傾向があり、「最も早く」「最も安く」「とにかく簡単に」が重要なポイントになる。
このように、新築とリフォームでは、顧客の求める価値が異なるため、両方を同じスタイルで対応するのは難しい。
まとめ
工務店が「新築専門」と「リフォーム専門」に分かれる理由は、大きく3つあります。
- ビジネスの時間軸の違い
→ 新築は長期的な計画、リフォームは当面の対応が求められる。 - 技術面での違い
→新築はゼロから作る自由度、リフォームは既存の建物に合わせる技術が必要。 - 顧客ニーズの違い
→新築は「理想の家を作る」ことが目的、リフォームは「今の家を快適にする」ことが目的です。
どちらが優れているというわけではなく、それぞれに専門性が求められるため、分かれているのが現実なのです。