東大准教授・前真之(まえ・まさゆき)さんの名を耳にしたことがある方も多いでしょう。住宅業界に一石を投じた名著『エコハウスのウソ』の著者です。
初版が出版されたのは2012年。当時から「本当に良い家とは何か?」を真剣に問い続け、超高性能サーモカメラを掲げ様々な調査を行い、豊富なエビデンスをベースに、エコハウスの理想像をアップデートしてきました。そして今回、三度目の大改訂を経て登場したのが——**『エコハウスのウソ2030』**です。
この最新版は、まさに「これからの家づくり」のファイナルアンサー。住宅を取り巻くエネルギー事情、気候変動、健康、快適性…すべてに真正面から向き合い、2030年にも通用する住宅の条件を明確に打ち出しています。
■ これからのエコハウス 5つの条件
1. 高断熱・高気密
断熱性能は等級6.5(Ua値0.35程度)、気密性能はC値0.5以下がスタンダード。これは準寒冷地でも通用する水準で、冬の暖房負荷を大きく抑えることが可能になります。
2. 窓が命
前先生は「窓こそ最重要」と明言。壁の断熱よりもまず窓を疑え。高性能トリプルガラスはマストと心得ましょう。
3. 設備の力を活かす
エアコン1台で全館24時間空調を実現。冬のヒートショック、夏の熱中症リスクを抑えられるのは、設備と間取りのチームプレーです。
4. 太陽光発電をフル活用
屋根には可能な限り太陽光を載せ、家全体の電力をカバーする大容量を推奨。給湯や家電の自家消費率を上げる工夫も紹介されています。
5. スマート制御の時代へ
5つの条件が揃えば、電力の需給に応じて家電設備を自動制御する「エネルギーマネジメントの未来」も見えてきます。
これらすべてを満たした住宅こそが、「本当に良い家」=エコハウスの完成形だと、前先生は断言しています。
■ 実務者の現場にも、この一冊。
私自身、この条件に一切の異論はありません。むしろ、これこそが日本の住宅のベーシックスタンダードになるべきだと強く感じています。
最近では「蓄電池ってどうなの?」という話題も多く聞かれますが、前先生の見解は明快です。
——「蓄電池は消耗品。FIT(固定価格買取制度)期間中は設置を急がず、卒FITのタイミングで導入すべき」。このような的確な助言こそが、信頼できる知見の証です。
■ 情報過多の時代だからこそ、確かな一本の矢を。
YouTubeやSNSには、玉石混交の情報があふれています。ですが、専門知識に裏打ちされた一冊の本が、未来の住まいづくりの指針になると私は信じています。
あれこれ無駄にネットサーフィンするよりも、優れた書を1冊読んだほうがタイパよく効果的。
これから家を建てようとしている方はもちろん、工務店や設計事務所など住宅のプロにとっても、『エコハウスのウソ2030』は必携の書。
事務所に1冊、いや、複数冊置いて、お客様への説明や勉強会の資料としても活用すべき一冊です。
そして何よりも、この本が目指すのは、**「冬あたたかく、夏すずしく、そして家計にもやさしい」**本当の意味でのエコハウス。
今回の本では、前さんは答えを出してますから。
情報に惑わされることなく、住まい手として、つくり手として、この“本物の知識”とともに未来の住宅を描いていきましょう。
関連情報として、前先生とのコラボ動画をご紹介しておきます。