「1種全熱交換はやめたほうがいいですよ」って本当?

住環境・健康
admin

「1種全熱交換はやめたほうがいいですよ。温暖地だと元が取れませんから。」

こんな説明を、住宅会社や設備業者から聞いたことがある方もいるかもしれません。
ですが、実務者の「採用しない理由」をよくよく聞いていくと、かなり視野が狭い話になっていることが多いです。

どうして「温暖地は元が取れない」という話になりがちなのか?
そして、「住民は管理できないから3種換気で十分」という意見が目立ちます。

果たして現実的にはどうなのか?
それでも1種全熱交換を検討する価値がどこにあるのか?
を、できるだけ噛み砕いてお話しします。


①「温暖地は元が取れない」という短絡思考

まずよくある説明がこれです。

「6地域(太平洋側の温暖地)だと、そもそも暖房エネルギーが少ない。
だから、1種全熱換気の設備費をかけても、節約できる暖房代が小さくて元が取れない」

一見それっぽく聞こえますが、ここには大事な前提が抜け落ちています。

暖房だけでなく「冷房」も足し算しないといけない

例えば、新潟のような日本海側は冬の暖房エネルギーが大きい反面、夏の冷房負荷は太平洋側に比べるとまだマシな地域です。
一方、6地域のような太平洋側の温暖地は、

  • 冬の暖房負荷:新潟より少ない

  • 夏の冷房負荷:新潟より多い

という傾向になります。

ここで「暖房だけ」を切り取って議論すると、
「暖房が少ない=元が取れない」という話になってしまうのですが、本来見るべきは

一年トータルの“冷暖房+除湿”のエネルギー

です。
暖房と冷房を合計した「年間の空調エネルギー」を比べると、

  • 太平洋側

  • 日本海側

で、実はそこまで大きな差が出ない、というケースも多いのです。

つまり、本来は

「冬の暖房代」だけじゃなく「夏の冷房代・除湿代」も含めて、
1種全熱交換の効果を評価しないとフェアじゃない

ということです。

「お金」の話だけで判断すると、肝心な価値を見落とす

そしてもう一つ大事なのは、

物事の良し悪しを「省エネで何年でペイするか」だけで決めてしまっていいのか?

という視点です。

1種全熱換気の本当の価値は、

  • 室内の空気質(空気のきれいさ・臭気のこもりにくさ)

  • 湿度の安定(冬の乾燥・夏のジメジメの軽減)

  • その結果としての、健康性や快適性

といった「暮らしの質」にあります。

冬:加湿器だらけのリビングと、全熱換気の家

冬になると、

  • 加湿器をフル稼働

  • 室内干しをしてもまだ乾燥気味

  • 喉がイガイガ、肌がカサカサ

というご家庭は多いと思います。
全熱交換換気は、排気側の湿気を給気側にある程度戻しながら換気するため、何もしないよりは湿度が下がりにくくなります。
その分、加湿器にかける電気代・機器代も抑えられます。

夏:エアコン除湿地獄と、全熱換気の家

夏のジメジメも同じです。

  • 外気が高温多湿 → そのまま給気すると室内もジメジメ

  • エアコンの除湿運転で一生懸命湿気を飛ばす

  • 電気代がかさむ・冷え過ぎて体がだるい

全熱交換換気は、外の湿気をそのまま室内に持ち込まない方向に働くので、
エアコン任せの除湿より負荷を減らせます。

ここまで含めてトータルで考えると、

「暖房代のペイがどうこう」だけで“採用しない”と決めてしまうのは、
もったいない判断

だと感じています。


②「住民は管理できないから3種換気でいい」という本音

もう一つよく聞く理由がこれです。

「1種全熱換気はフィルター清掃が必要だけど、
住んでいる人はどうせやらないから、3種換気にしています」

たしかに、フィルター清掃は必要です。
しかし、ここにもすり替えがあります。

3種換気だって、誰も掃除していない

3種換気でも、各部屋のレジスターや給気口にはフィルターが付きます。
本来はそこも定期的に掃除が必要ですが、実際どうでしょうか?

  • ほこりで詰まったまま

  • フィルターの存在すら知られていない

というケースがほとんどです。

「1種は住民が掃除しないからダメ」
というのなら、
「3種なら掃除されているのか?」というと、そんなことはありません。

「住民は管理できない」を理由に1種を否定するのは、
単に自社がその設備に慣れていない、提案・説明の手間をかけたくない、という業者側の都合であることも多いと感じます。

設計次第で「掃除しやすい1種」はつくれる

もう一点、実務的な工夫の話もしておきます。

よくあるのが、

  • 天井高2400mmの天井裏に本体を設置

  • フィルター掃除には脚立が必須

  • 結果的に、奥さま一人では手が出せない

というパターン。

これでは、たしかに管理は面倒です。

一方で、私たちは

  • 脱衣室など、天井を2100mm程度に低くしたスペース

  • その天井裏、あるいは高めの位置の壁面に換気ユニットを配置

といった工夫をすることで、

「脚立なし、手を伸ばせば届く位置」にフィルターを持ってくる

ようにしています。
これだけで、掃除のハードルはグッと下がります。

要するに、

「住民は管理できないから」と言う前に、
“管理しやすい設計”をしているのか?

という話なのです。


忘れてはいけない「目的」:空気の質を良くするための換気

1種にするか3種にするか、という議論は、
いつの間にか

  • イニシャルコストが高い/安い

  • メンテナンスが面倒/簡単

といった「手段の話」だけに終始しがちです。

しかし、本来の目的はシンプルです。

換気とは、室内の空気の質を良くするためのもの

  • 花粉・PM2.5・黄砂が多い地域で、外気をそのまま入れ続けていいのか

  • 夏冬の極端な湿度変動が、健康や建物に与える影響をどう考えるか

こういったことを総合的に考えていくと、

「お金だけ」「掃除だけ」で1種全熱交換を切り捨てるのは、本質からズレている

と私は思います。


これから家を建てる方へのアドバイス

もし、これから家づくりを検討される中で、

  • 「この地域は暖かいから1種は要りません」

  • 「お客様はフィルター掃除しないから3種で十分です」

といった説明を受けたら、ぜひ次の質問を返してみてください。

  • 「冷房・除湿も含めた一年トータルのエネルギーで比較した資料はありますか?」

  • 「湿度の安定性や空気質の違いは、どのように評価していますか?」

  • 「フィルター清掃をしやすくするための設計上の工夫は、何かされていますか?」

ここで、きちんと説明してくれる会社かどうかで、
その会社が「暮らしの質を考えているか」が見えてくるはずです。

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