「施主支給」って、結局どこまでアリ?——現場目線で整理します
家づくりの打ち合わせをしていると、時々出てくるのが「施主支給(せしゅしきゅう)」という話。
これは簡単に言うと、お客様が自分で材料や製品を用意して、それを現場で渡し、工務店側が取り付けるというやり方です。
ネットで何でも買える時代ですから、「安く手に入るなら支給したい」という考えも自然です。
一方で、現場側から見ると「支給してもらって助かる」ケースと、「正直それは難しい…」というケースがはっきり分かれます。
そこで今回は、施主支給を大きく3つに分類して、現実的なラインを整理してみます。
1)アクセサリー類の施主支給(比較的OKな領域)
まずは、いわゆる「アクセサリー」に近いもの。
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トイレのペーパーホルダー
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ポスト
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ペンダント照明
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タオル掛け、棚、フック類 など
こういったものは、お客様がネット等で購入して、現場で渡して取り付けてもらうことがあります。
ただしここで誤解されやすいのが、「取り付けは無料で当然」ではないという点です。
現場では、
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取付位置の確認
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下地や補強の確認
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荷受け・破損・初期不良の確認
といった作業が発生します。
こちらが「ついでに付けられる」タイミングならサービスで対応することもありますが、
取付作業が独立した手間として発生する場合は、取付費(場合により手数料)がかかるのが普通です。代金の15%が相場なのではないでしょうか?

2)保証・責任が絡むパーツの施主支給(ここから難易度が上がる)
次に、故障時の責任や保証が絡む部材です。
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電気のスイッチ・コンセント類
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スイッチプレート
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ブラケット照明や器具類
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既製のダウンライト器具 など
たとえばペンダント照明は、引っ掛けシーリングにねじ込むタイプなら、故障したら外して買い替えやすい。
でも、スイッチや配線が絡む部材は違います。
壊れたときは「交換工事」そのものが必要ですし、電気工事は資格者でなければできません。
ここで問題になるのが、
施主支給した製品が、工務店の保証範囲に入るのか?
という点です。
製品の不具合なのか、施工側の問題なのか、切り分けが難しくなりやすい。
そのため、会社によっては「この範囲は支給不可」「条件付きでOK」とルールを決めていることが多いです。
こういった履歴も、通常の履歴管理とは情報を別管理しなくてはならないし、作って保証する側からすればご遠慮願いたいと思うのは当然じゃないかなと。
3)住宅設備そのものの施主支給(基本的に受けない会社が多い)
最後は、住宅設備そのものの支給です。
例としては、
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システムキッチンをネットで買って支給する
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洗面台一式、ユニットバス、トイレ本体を支給する
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給湯器や換気設備を支給する
このクラスになると、話が一気に現場寄りになります。
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荷受け(時間指定・搬入経路・破損確認)
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保管場所の確保
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組立・据付
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配管・電気・ダクトなど他工事との取り合い調整
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不具合が出たときの責任分界の混乱
こうした管理をするのは現場監督の仕事ですが、支給になっても仕事が減るわけではありません。
むしろ、いつものルーティンから外れる分、確認事項が増えて手間が上がります。
IKEAキッチンの現場を見て、正直ゾッとした話
以前(10年以上の昔話)、IKEAのキッチンを施主支給した現場を見たことがあります。
正直、かなり衝撃でした。
天板が「木そのまま」で、仕上げがされていない。
シンクを納めるための加工も必要。
天板表面もざらざらで、通常ならウレタン塗装などの仕上げ工程が必要な状態でした。
その現場では、ざらざらのまま取り付けて終わっていて、
引き渡し後にお客様がヤスリがけして塗装する前提なのかな…?という仕上がり。
もちろん、DIY前提で楽しめる人もいます。
ただ、それを「注文住宅の現場品質」と同列で扱うと、事故が起きると感じました。

結論:施主支給は「完成後に自分で付けられるもの」くらいが現実的
だから私の考えはこうです。
施主支給として許される(トラブルになりにくい)範囲は、
建物が完成してから、お客様が自己責任で取り付け・交換できるアクセサリー類が中心。
住宅設備まで施主支給にして、
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発注も荷受けも管理も全部お客様
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工事段取りも自分
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何かあっても保証は自己責任
というなら、もうそれは「注文住宅」というより、ほぼDIY住宅です。
「安くしたい」気持ちはわかります。
でも、家づくりは“製品代”だけで成り立っていない。
現場管理・責任施工・保証・段取りのコストがセットになって、初めて「安心して住める家」になります。なので、注文住宅は吟味した施工店にお任せするのが原則ではないでしょうか?
施主支給を考えるなら、ぜひこの視点も忘れずに。
