AI時代、家づくりの相談先はどこへ向かうのか

相模 稔相模 稔

設計事務所を訪ねる人が、静かに減っているという違和感

最近、「注文住宅で設計事務所に依頼する人が減っているかも?」という話を耳にすることがあった。あくまで体感や周辺の声からの仮説ではあるが、感覚としてはそれほど外れていない気がしている。

少し前まで、強いこだわりを持つ人ほど、設計事務所の門を叩いていた。
ハウスメーカーや工務店では物足りず、自分の考えや価値観を一から受け止め、形にしてくれる存在として、設計事務所は選ばれてきた。

では、なぜ今、その流れに変化が起きているのか。
私はその背景に「AIの存在」があるのではないかと考えている。


家づくりにAIが浸透して生じる変化

今の家づくり検討者は、驚くほどよく考えている。
間取り、性能、コスト、デザイン、将来の暮らし方。
これらを、かつては設計者との対話の中で少しずつ整理していったが、
今はAIとのやりとりで、かなりの部分まで自分の中で言語化できてしまう。

ChatGPTのようなAIは、否定しない。
急かさない。
何度聞いても嫌な顔をしない。

その結果、家づくりを考える人は、以前よりも「考えた状態」で次の相談先を探すようになった。
つまり、「相談するための場所」として設計事務所を訪ねる必然性が、相対的に下がってきているのではないか、という仮説だ。

一方で、住宅会社側でもAIの活用は急速に進んでいる。
設計の補助、情報整理、説明資料づくり、さらには営業の現場でも、
AIは当たり前の存在になりつつある。

興味深いのは、使う側と使われる側、つまり住宅会社と施主が、同時にAIを使い始めている点だ。
これは過去に全くなかった状況だ。

では、その結果として、消費行動はどう変わったのか。

私が現場で感じるのは、「確認したい人が増えた」という変化だ。

白紙の状態で連れてこられるお客さんは減り、代わりに「ここまでは考えたのですが、この方向で大きく間違っていませんか?」と確認のためのケースが増えている。

 情報は世の中にいくらでも溢れている。AIはそれを整理はしてくれるが、決断まではしてくれない。
最終的に「この選択でよかった」と言えるかどうかは、人が引き受けるしかない。
だからこそ、これからの住宅会社や工務店に求められる役割は、「提案すること」よりも、「整理された思考を現実に落とし込み、可能かどうかの判断を支えること」なのだと思う。


最後はリアルな最適解が答え

なぜならば、家を作る行為は「リアル」であるからだ。
設計・施工・コスト・工期・アフターメンテナンスを同時に考えた最適解を求める行為である。
理想的な条件をAIを用いて全て並べたとしても、相反関係で矛盾があったり、
今、この新潟のこの場所で、最適かどうかは別の話である。
さらには、あなたにとって、後々問題になるからやめておいたほうがいいよ、という判断もすべきこともある。

だからいくらAIで情報を収集し整理したとしても、「リアル」ではない。

この文脈でAI時代の家づくりを考えると、一気通貫でリアルに通じている地域工務店の存在感は揺るがないように思える。むしろ強まっているのだろう。

しかし、設計事務所が不要になる、という話ではない。
思想や世界観に身を委ねたい人、想定外の提案を受け取りたい人にとって、設計事務所は今後も重要な存在であり続けるだろう。ただ、世界観もない、お客さんの欲望を実現することだけでやれてきた設計事務所には仕事が回らなくなるように思える。

 

結論

AIによって賢くなった施主が、次に求めるべきは「自己完結の正解」ではない。
自分が考えてきたことが、現実として成立するのかどうか。
そこを一緒に引き受けてくれる相手だ。

家づくりの相談先が変わりつつあるのは、技術の進歩というより、
AIの登場により思考のプロセスそのものが変わってきた結果なのかもしれない。

 

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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