賑わいの器「亀田の家C」
設計:ma ヤマシタマコト 監督:塩谷 栄一 棟梁:小林義宗
- 設計コンセプト
- 亀田駅にほど近い、成熟した住宅地にある北入りの敷地での建て替え計画である。
64坪ほどの敷地のなかに、3台分の駐車場、小さくとも菜園などを楽しめる庭、そして夫婦と3人の娘たち、奥様の母親の計6人が暮らすための住まいが求められた。
周りを既存の住宅に囲まれており、特に南側は長く、背の高い住宅によって塞がれている。
しかし幸い南東には隣家の庭があり、空に向かって視界が良く抜け、また庭木の緑を借景することができる。
さらに、北側の通りを挟んだ向かいのお宅にも、よく育った庭木が見える。
これらの周辺環境を足がかりにして、南東に庭を、北東に駐車場をとることで、自ずとTの字型のプランとなった。
個性豊かな家族が集まって、遠慮なく語り合い、ときにぶつかり合って賑やかに暮らす、ワンプレートランチのような、あるいはスリランカカレーの一皿のような、そんな器としての楽しい住まいを想像しながら設計した。
- 外観
- 施主の要望で屋根は瓦、外壁は杉板の横張りとした。
下屋部分、二階建て部分とも切妻屋根を素直にかけてすっきりとした外観としている。
下野部分の屋根は道路側に軒を6尺(約1.8M)伸ばし、食堂の窓を深く守りつつ、軒先が下がることで重厚で美しい瓦屋根を通りからも見上げることができる。
深い軒下は自転車を置いたり、ご主人の喫煙スペースとして機能している(そのための小さなベンチも設けた)。
正面には車を3台駐める必要があるため植栽は最小限としているが、道路と駐車スペースの間に600mmの自然石の帯を設けて敷地境界を明示するとともに、少しだけ柔らかな印象を道路に対して与えようと考えた。
- 内観
- 主室は下屋(二階が載っていない)であることから、船底天井として栂の小幅板を張り、また壁は珪藻土系の塗り壁として、家族をやわらかく包み込むような意匠とした。
南北方向に開けられた大きな開口は、視覚的な抜けと隣家の庭の緑を獲得している。
北側の窓ぎわにはダイニングテーブルが置かれ、椅子に腰掛けると深い軒ごしに隣家のヤマボウシがよく見える。
子供たちを含めて家族の皆が厨房に立つことから、家の中心に大きめのアイランド型キッチンを据えた。
このキッチンと背面の収納を中心として二重の大きな回遊動線をとっている。
そのうちのひとつは水回りへの通路でもあると同時に、お母様が主室を通らずともご自分の部屋に入るためのいわば裏動線になっている。
この裏動線には家族皆で使用する収納を設けている。
ちなみにキッチンはめずらしくクリナップの既製品。
黒く大きく存在感があり、空間をきりりと締めているように思う。
- 空調設備
- 基本的には暖房用の床下エアコンと階段室に設置した冷房用エアコンの二台で運用する。
母親の部屋には予備として壁掛けエアコンを設置しているが、あまり使用してはいないとのこと。
床下にはアローファンを用意してあり、床下の空気を強制的に階間に送り込むことができるようにしている。
二階の床の一部をFRPグレーチングとして、一階の廊下へ光を落とすとともに、冷房用エアコンからの冷気が一階に落ちやすいようにした。
- 規模・構造
- 木造在来工法二階建て
一階床面積 82.81㎡(約25坪)
二階床面積 62.11㎡(約18.8坪)
延べ床面積 144.92㎡(約43.8坪)
- 性能
- 耐震等級2以上
Q値:0.88 [W/m2K]
Ua値:0.31 [W/m2K]
暖房負荷:21.9 [kWh/m2]
冷房負荷:14.3 [kWh/m2]