大きな器に小さく豊かに住まう「漆山の家E」実家リノベーション
設計・監督:塩谷 英一
- コンセプト
- オガスタ代表・相模の実家リノベーション。相模の兄上夫婦が老後を温かく過ごすための改修計画です。
人の暮らしは変容します。夫婦二人と猫たちが住むには大きくなりすぎた実家。そして冬寒すぎる実家。
この家を丸ごと全部でなく、延床約68坪のうち一階の27坪を改修しました。ほどほどの改修範囲内だけで、快適に基本的な生活を送ることができるようにした、性能向上型・部分リノベーションです。
改修内容は 1.耐震改修、2.断熱改修、3.機能向上(間取り、内外装、設備機器、坪庭等の更新)の3つ。
敷地は両側の隣家が接近し、非常に奥行きのあるウナギの寝床的な敷地で、細長く奥行きのある建物(間口4間半、奥行き11間)の真ん中あたりにやっと外に開いた坪庭があります。
間仕切りを取り払い、この4坪の坪庭を含めた一体的な一室空間へと様変わりさせ、室内に新しいランドスケープ・風景をつくりました。
- 外観
- 外壁にはもともと木の板(ベイスギ)が張られていました。西日の当たる場所など劣化の激しい板もありましたが、状態のよい板も多くあったので、これらは削りなおして内装で再利用しました。
壁の中は、べと壁と一部RC壁になっていたため、その蓄熱性を考慮して壁の外周から断熱材ですっぽり覆い、新たに仕上げました。表通りに面した正面は古い街並みに寄り添い、杉板で仕上げました。瓦屋根は既存のものをそのまま利用しています。
- 内観
- 家の中心にある坪庭をコの字に囲うように、畳小上り、リビング、キッチン、ダイニング、寝室を配置し、仕切りなく一室空間としています。(寝室は引戸で開閉可能)
坪庭は光の井戸となって、家全体にほどよい自然光と風を導き入れます。
2階部分が載った畳小上りは床を高くした分低めの天井、平屋部分のリビング・ダイニング・キッチンは屋根のカタチそのままが表れた開放的な船底天井、寝室や水回りは標準の天井という風に、なんとなく家の室内に坪庭と連続したランドスケープができました。
家の中心には長さ3メートル・無垢ケヤキの一枚板のダイニングテーブルを置きました。30ミリの薄さと割れ止めのチギリによって現代性をもたせています。
ダイニングテーブルの上部は、家の構造の特徴を顕著に表している個性的な梁架構を現しにしています。
- 庭
- 4坪の坪庭。もともと土の地面に巨大な石がゴロゴロと置かれて周囲に木が植えられていました。ジメっとして草木が鬱蒼として暗く、坪庭としての本来の役割が消え、室内とは関りが途絶え、生活とは無関係に切断した状態になっていました。
これをドライな石庭に変え、地面には土ではなく砂利を敷き、ウッドデッキではなくコンクリート平板を敷きました。
- 素材
- リノベーションでは、既存物も大切な素材の一つです。ここには5種類の素材が混在しています。
1.既存そのままのオリジナル材、2.既存のカタチを残しつつ表面を削り加工したもの、3.既存を加工して形を丸きり変えた材、4.既存廃材と新規材を混ぜたもの、5.新規材。
たとえば柱に穴が空いたまま表面だけキレイに削ったり、外壁の板を削りなおして天井材で使ったり、解体時に出た古いべと壁の土を新たな塗り壁に混ぜ込んで塗ったり。
古さの素晴らしいところの一つはその情報量です。新しいけどなんか懐かしいねとか、なんか味わい深いねという風景がなんとなく感じられます。
- 規模・構造
- 敷地面積:286.18坪
延床面積:67.85坪(今回の改修範囲:27坪)
木造在来工法 2階建て