光の帯がやわらかく照らす「女池の家C」
設計/maヤマシタマコト 設計補佐/小林紘大 監督/小林秀昭
- コンセプト
- 新潟市中央区の住宅地。前面道路は狭く、袋小路のため、通過交通も通行人もない静かな環境である。
約96坪ほどのゆったりとした敷地に、軒の低い、平屋のように見える家を提案する。
庭の設計・施工は地元の造園会社、要松園コーポレーションに依頼した。
多層的に植えられる庭木と相まって、昔からここにあるような家にしたいと考えた。
- 外観
- 外壁は杉板の縦張り押縁である。これに三枚の屋根を重なるように掛ける。
とくに玄関ポーチの屋根は手が届くほどに低く、外部収納にも囲まれて、守られた玄関廻りになっている。
二階部分も軒高さを低く設定しているため、一見、腰屋根付きの平屋住宅のようにも見える。
- 内部空間
- 玄関は土間、ホールあわせて5帖ほどあり、充分な収納を用意した。また玄関土間には同じく土間で床を仕上げた4帖ほどの作業スペースが用意されている。自転車の保管や整備などに使われる。
居間、食堂、台所は26帖の一体空間で、ツガの小巾板で仕上げられた勾配天井で包まれている。南の庭に面して、一間半巾の引き違い窓が二窓、都合3間ぶんの開口が開けられ、庭の景色を存分に楽しむことができる。この窓には 障子戸のほかに簾戸が用意されていて、生活の場面に合わせて光や庭の見え方を操作することができる。簾戸は他の建具に比べて値が張るが、その効果は素晴らしく、機会があれば採用したい。
大きい部屋の場合、窓から離れた奥には光が届きにくく、暗くなりがちだ。そこで主室北側の壁の上部に横長の高窓を設けて、グレーチングを介して拡散する光の帯でこの壁を照らすこととした。これによりやわらかな光が部屋中をつつむ効果を生んだ。
キッチンはオリジナルで製作したアイランドキッチンで、巾2500、奥行き750とゆったりしている。
二階には階段をはさんでふたつのこども室があるのみで、障子戸をあけると光の帯を構成する高窓とグレーチングの床があり、下階の気配を感じることが出来る。
- 外構計画
- 外構計画は地元の造園家、要松園の土沼隆雄氏と協力して計画した。
アプローチは自然石の乱張りで仕上げられ、イロハモミジやヤマモミジ、コバトネリコといった落葉樹で囲まれる。また足下にはスギゴケが植えられた。
主室の前の主庭は暮らしの庭で、施主自身が管理しやすいように、洗い出しによる犬走り、家庭菜園と小さな芝のスペースで構成されている。これらをアセビ、ジューンベリーを屏風を立てるかのように植え、ゆるやかに囲っている。また足下には多様な野草が植えられ、季節ごとに彩りを添える。
隣家との境界にはチャボヒバが植えられた。
造園家と組むことで、普段使わない樹木や手法、庭に対する考え方を学ぶことが出来た。
- 空調計画
- 暖房は家の中心部にある家具に内蔵された床下エアコンによって行う。
冷房用のエアコンは光の帯を構成するグレーチングの上部に用意されている。
- 断熱性能
- 屋根面には高性能グラスウール360ミリ、外壁面には付加断熱を施し、同じく高性能グラスウールを220ミリ充填している。窓にはトリプルサッシを採用。Ua値 0.27、Q値 0.81。
- 規模・構造
- 敷地面積 317㎡
延床面積 150.68㎡
木造二階建て在来工法