テレビが主役ではない時代の、リビング照明のつくり方

相模 稔相模 稔

時代が変われば、暮らし方も変わります。
そして暮らし方が変われば、当然、住宅の設計も変わらなければなりません。

その変化が最も表れやすい場所の一つが、リビングです。

かつてのリビングでは、テレビが夜の主役でした。家族全員が同じ番組を見て、テレビを中心にソファや家具を配置する。照明は、天井中央の大きなシーリングライトで、部屋全体を均等に明るくするのが定番でした。

しかし今は、家族が同じ場所にいても、それぞれがスマートフォンやタブレットを手にして、違うコンテンツを楽しんでいます。地上波テレビをほとんど見ない人や、そもそも液晶テレビを置かない家庭も珍しくなくなりました。

その一方で、Amazon Prime VideoやNetflixなどを、100インチを超えるプロジェクター画面で楽しむ家庭は増えています。

壁いっぱいに映画を映し、ソファに深く腰掛けて、飲み物を片手に過ごす。リビングは「テレビを見る部屋」から、家族それぞれが好きな時間を味わう場所へ変わりつつあるのです。

プロジェクターのあるリビングに、明るすぎる照明はいらない

暮らし方が変われば、照明の考え方も変わります。

プロジェクターで映画やドラマを楽しむなら、天井中央のシーリングライトで部屋中を均一に照らす必要はありません。むしろ、頭上から強い光を浴びせると、映像のコントラストが落ち、せっかくの没入感が損なわれてしまいます。

プロジェクターの映像自体が、室内にある程度の光を放っています。そこに必要なのは、部屋全体を照らす強い光ではありません。手元や足元、壁の一部をやさしく照らす、小さな明かりです。

ソファの脇に置くフロアスタンド。棚の上のテーブルランプ。壁や天井に光を反射させる間接照明。場合によっては、キャンドルライト(LEDタイプでも)だけでもよいでしょう。

一つの強い照明で部屋全体を照らすのではなく、低い位置に小さな光をいくつか置く。すると室内に陰影が生まれ、夜らしい落ち着きのある空間になります。

住宅の照明計画では、この「光の重心を下げる」という考え方がとても大切です。

 

 

「明るい部屋ほどよい部屋」ではない

日本の住宅では長い間、「明るい部屋ほどよい部屋」という価値観が支配的でした。

しかし、部屋の隅々まで白い光で均等に照らすことが、本当に快適なのでしょうか。

6000K前後の青白い照明は、文字を読んだり細かな作業をしたりする場所には向いています。しかし、食事を終えてくつろぎ、やがて眠りへ向かう夜のリビングには、少々刺激が強すぎます。

夜は、夜らしく暗くてよいのです。

暗さは、不便さではありません。必要な場所に必要な光があれば、空間全体を昼間のように明るくする必要はない。

本を読むなら手元に読書灯を置く。
食事をするなら、ダイニングテーブルの上を照らす。
室内を移動する場所には、足元灯を設ける。

「部屋を明るくする」のではなく、「人の行為を照らす」と考えるのです。

夜のリビングには、オレンジ色の落ち着いた電球色が似合います。色温度では2700K前後が目安です。窓から自然光が入る昼と、淡い光に包まれる夜。その明暗の変化が、暮らしに一日のリズムをつくり、自然に眠りへと導いてくれます。

照明器具は、設備ではなく家具として選ぶ

照明器具は、ヨーロッパの名作照明から選ぶのもよいでしょう。
長く使われてきた照明には、光の美しさと造形の完成度があります。

一方で、家中を高価なブランド照明で揃える必要はありません。

ハンドメイドマーケットのCreemaには、木、真鍮、ガラス、陶器、和紙などを使った、クラフト作家による個性的な照明が数多く掲載されています。

Creema「照明・ライト・ランプ」

家が完成した時点ですべての照明を決めてしまわず、暮らしながら気に入ったスタンドライトを一つずつ加えていく。家具の配置や季節に合わせて、光の位置を変えてみる。そのくらい自由でよいと思います。

そのため住宅設計では、天井に照明器具を増やすことよりも、ソファの脇や部屋の隅にコンセントを用意しておくことが重要です。調光できる回路も設けておけば、食事、読書、映画鑑賞など、そのときの過ごし方に合わせて明るさを変えられます。

天井を照明器具だらけにしない

住宅の天井に、ダウンライトを碁盤の目のように並べた設計をよく見かけます。

たしかに部屋は明るくなります。しかし、光源が人の頭上に集中するため、ソファでくつろいでいるときにはまぶしく感じやすい。昼間に天井を見上げれば、黒い穴がいくつも並んで見えます。

照明器具の数が多いことと、居心地がよいことは同じではありません。

昼は窓から入る自然光を生かし、夜は必要な場所に小さな光を置く。天井はなるべく静かに整え、置き照明によって、その日の気分に合った居場所をつくる。

これからのリビング照明は、「何畳用の照明を付けるか」ではなく、「夜をどのように過ごしたいか」から考えるべきです。

関連動画の「ダウンライトを天井につけないわけ」は、24万回を超えて再生されています。それだけ多くの人が、従来の住宅照明に違和感を持ち始めているということでしょう。

照明計画とは、器具を配置する作業ではありません。そこで家族がどのような夜を過ごすのか。その光景まで想像して、初めて本当の照明設計になるのです。

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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