15年後、住宅貧乏になるか。豊かに暮らせるか。 ――480万円の修繕費から考える、家の本当の値段

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admin

15年後の「480万円」から考える住宅の維持費

Xを眺めていたら、なかなか衝撃的な投稿が流れてきました。

大和ハウスで建てた築15年の住宅。延長保証に関連するメンテナンスとして、シーリングの打ち替えやバルコニー防水などで約330万円。そこに屋根塗装などを加えて約450万円。さらに細かな塗装まで含めると、最終的な見積額は約480万円になったという話です。

もちろん、これはSNS上に投稿された一事例です。住宅の大きさも形状も、劣化状況も仕様も違いますから、「大和ハウスなら15年で必ず480万円かかる」という話ではありません。

ただし、この話を単なる「高いなあ」で終わらせてはいけないと思います。

これから家を建てる人にとって、かなり重要な問題が含まれているからです。

家の価格は「建てる時の金額」だけではない

住宅会社を比較するとき、多くの人が坪単価や総工事費を気にします。

4,000万円の会社と4,300万円の会社なら、当然4,000万円の方が安く見える。

しかし、本当に比較すべきなのはそこだけではありません。

30年、40年と住む間に、

どれだけの営繕工事が必要になるのか?
特に外部塗装工事にお金がかかります。 (外壁・コーキング・屋根など)

そして、その工事を誰に頼むことになるのか。

ここまで含めて住宅の価格です。

今回のケースが仮に15年間で480万円だとすれば、月割りすると約2万6,700円です。

住宅ローンとは別に、毎月約2万7,000円を「将来の建物修繕費」として積み立てておかなければならない計算になります。

これを聞くと、住宅取得時の300万円、500万円の価格差だけを必死に比較していることが、少し違って見えてくるのではないでしょうか。

「長期保証」という言葉にも注意が必要

大手ハウスメーカーのホームページを見ると、「60年長期保証」など非常に安心感のある言葉が並んでいます。

しかし、ここは保証制度の内容まで読まなければなりません。

大和ハウスの現在の保証制度でも、初期保証終了後については、点検・診断に基づく所定の有料メンテナンス工事を実施することを条件として保証を延長する仕組みが明記されています。なお、保証内容は建築時期や商品によって異なります。

つまり、

「60年間、何もしなくても無料で保証してもらえる」

という意味ではありません。

必要なメンテナンスをして、建物を良好な状態に保ちながら保証をつないでいく制度です。

これは制度としておかしいわけではありません。建物なのですから、メンテナンスが必要なのは当然です。(車の法定点検でのメンテに似てますね)

問題は、家を買う人が「長期保証」という言葉からイメージするものと、実際の維持費との間にかなりの距離がある可能性があることです。

だから家を建てる前に聞いておくべきなのです。

「保証は何年ですか?」

だけでは足りません。

「その保証を継続するために、10年後、15年後、30年後に、どんな工事が想定され、いくらぐらいかかりますか?」

ここまで聞いて、初めて意味があります。

大手ハウスメーカーのリフォームが高くなりやすい理由

今回投稿されていた見積書を見る限り、私はかなり高額だという印象を持ちました。

同じ工事内容を、地域の信頼できる塗装会社や防水会社、工務店などに直接依頼すれば、相当に金額が下がる可能性があります。住宅の条件によっては半額近くになるケースがあっても不思議ではありません。

ただし、大手には大手の事情があります。

全国組織を維持し、営業担当者がいて、管理部門があり、点検担当がいて、大手ハウスメーカーの販管費は、地域工務店よりは段違いに高い。そのコストは当然価格に乗ってきます。

しかも新築営業と違い、既存オーナーへのリフォームは新規顧客を探すための営業コストが小さい。

そのうえ施主側も、「建ててもらった会社だから、そのままお願いしよう」となりやすい。

ここに価格競争が働きにくい構造があります。

大手ハウスメーカーを選ぶ人には、「住宅のことは全部お任せしたい」という安心感を重視する人も多いでしょう。

結果、好きなような見積もりでも通ってしまうビジネスモデル。

なので、「全部お任せできる」というサービスには、当然ながら相応の価格がついている。

そこは理解して家を買う必要があります。

まだ住宅ローンが残っている15年目

そして、私がもっと気になるのはこちらです。

築15年という時期です。

35歳で35年ローンを組んで家を建てた人なら、50歳。

まだ住宅ローンは20年残っています。

子どもが高校、大学に進学する時期と重なる家庭も多いでしょう。

そんなタイミングで、

「外部メンテナンスに480万円必要です」と言われる。

手元資金がなければ、住宅ローンを返しながら、さらにリフォームローンを組むことになる。

住宅を手に入れたことで、長期間にわたって家計が住宅費に縛られてしまう。

新建新聞社の三浦祐成さんは以前から、日本の住宅をめぐる問題を「住宅貧乏病」という言葉で表現しています。住宅を持つことが豊かさにつながらず、むしろ家計や暮らしの負担になってしまう構造への問題提起です。

私は今回の480万円という数字を見て、その言葉を思い出しました。

 

しかも480万円に「設備交換」は入っていない

さらに重要なのはここです。

今回話題になった約480万円は、主として外壁、屋根、シーリング、防水といった建物外部のメンテナンスです。

しかし築15年といえば、住宅設備も更新期に入り始めます。

給湯器、エコキュート、エアコン、食洗機、IH、レンジフード。

家の中には機械がたくさんあります。機械である以上、永久には使えません。

つまり、

「15年で480万円用意しておけば安心」という話ですらない。

外装工事とは別に、設備更新費用も考えておかなければならないのです。

住宅は、躯体がだめになることはめちゃ長期的な話で、真っ先にだめになるのが設備です。
なのに、この事例ではスッポり抜けていて、さらなる負担増が実は予見できる。
おそろしい・・・・

 

実は、外壁材の選択が将来の家計を左右する

今回の見積もりで特に大きいのが、シーリング関係の工事です。

サイディング系の外壁では、パネル同士の継ぎ目などにシーリング材を使います。

そこは雨水の侵入を防ぐうえで重要な部分ですから、劣化すれば放置するわけにはいきません。

 

私たちが外壁にガルバリウム鋼板や杉板を多く使う理由の一つもここにあります。

少なくともサイディングのように、外壁全面に大量の目地があり、そのシーリングを定期的に打ち替える必要性がありません。

もちろん、杉板だって永遠に新品の姿ではありません。

15年も経てば、かなり風合いは変わります。ところが、ここで大切なのが、

「古くなること」と「機能を失うこと」は違う、ということです。

杉板が日に焼け、色が抜け、多少くたびれて見えていても、外壁として機能しているなら、そのまま使えばいい。そのまま経年変化を楽しむ人は、そのままでいい。

きれいにしたくなった人は塗装すればいい。

ここには「15年経ったので保証のために一律に全面工事」という発想とは違う自由があります。

戸建住宅にも「修繕積立金」という発想を

マンションに住んでいる人なら、毎月「修繕積立金」を払うのは当たり前です。

戸建住宅には管理組合がありませんから、誰も強制的に積み立ててくれません。

しかし、建物である以上、戸建住宅にも同じ考え方が必要です。

国土交通省の令和5年度マンション総合調査によると、マンション1戸当たりの修繕積立金は月平均13,054円です。

そこで戸建住宅でも、私はざっくり、月1万5,000円

くらいを「家のためのお金」としてストックしておくとよいと思います。

年間18万円。15年間で270万円です。

固定資産税を払うのと同じような感覚で、「家を所有するなら必要なコスト」と最初から考えておく。

270万円あれば、15年間何も壊れなければ、そのまま270万円残ります。

設備交換が必要なら、そこから出せばいい。

私たちの築15年の住宅では何が起きているか

私たちも創業から年月が経ち、築15年前後のオーナー宅が出てきました。

当然、何も起こらないわけではありません。

給湯設備を交換したり、エアコンを取り替えたりする相談はあります。

ただ、意外に多いのはもっと前向きな工事です。

子どもが成長したので間仕切りをつくりたい。

逆に、子どもが独立したので部屋の使い方を変えたい。

収納を少し直したい。庭が成長しすぎたので整理したい。

外壁がくたびれてきたので、この機会に少しきれいにしたい。

つまり15年目のメンテナンスとは、本来、

「壊れた家を元に戻すためだけのお金」ではないと思うのです。

15年間暮らして変わった家族に合わせて、家をもう一度調整する。
美観を整え、設備機能を更新し、ライフスタイルに合わせて建物をカスタムする。

こちらの方が、ずっと健全です。

270万円を積み立てたならば、そういうお金として使える。

こちらの方が、15年目に突然数百万円の見積書を渡されて慌てるより、はるかに健全です。

「メンテナンスフリー」という家はない

最後に、これから家を建てる人に覚えておいてほしいことがあります。

完全なメンテナンスフリー住宅などありません。

屋根も外壁も設備も、いつかは手を入れます。

だから大切なのは、「メンテナンスが必要か、不要か」ではありません。

どこに、何年後に、どれくらいのお金がかかるように設計されている家なのか。

住宅会社を比較するときには、ぜひ見積書の一番下に書かれた「建築費」だけを見ないでください。

その家を15年後、30年後にどう維持するのか。

保証を維持するための指定工事はいくらなのか。

そして、その工事を建築会社以外にも頼めるのか。

そこまで質問して初めて、本当の住宅価格が見えてきます。

住宅は暮らしを豊かにするための器です。

家を維持するために、暮らしそのものが貧しくなってしまったら、本末転倒なのです。

施主が主体になり、住宅を長期に維持管理していき、
それを工務店がサポートするのが理想だと考えます。
住宅の仕様も、短くとも30年のスパンで破綻しないものにしておくことが重要です。

理想は家を楽しむこと

つまりは、
全部他人に丸投げな意識で、
消耗品の寄せ集めで家を手に入れることが、問題の根源にあると考えます。
その逆が理想。
住む人が楽しみながら家に手を入れていけること。

このように文を練っていて、2024年に訪ねた、
スコットランドのアイラ島を思い起こしました。

この街の景観を特徴つけているのは、漆喰の白である。
吹き付ける潮風で塀や外壁は痛むのだろう。
住民の手で練られ、数年おきに幾重にも塗り重ねられたせいで、独特の有機的な凹凸がアイラしい。

手袋をして手で塗っているのではないか? 休日の昼間をDIYで費やし、
夕方には、牡蠣を肴に、シングルモルトウイスキーを楽しむ。そんな情景を想像した。

 

 

 

 

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