鎌田教授の 「本音のエコハウス」レビュー

相模 稔相模 稔

鎌田紀彦氏の著書 「本音のエコハウス」レビュー

建築知識ビルダーズで連載していた鎌田名誉教授の記事に、さらに書き下ろしの内容を加えて、1冊の本にまとまった本である。

別名で「エコハウスの歴史」としてもよい内容で、
寒冷地における高断熱住宅の時代的な変化が書いてあり、非常に勉強になる。

シート気密・ボード気密の2つの気密施工の手法ができたが、ボードの耐震面材の普及によりボード気密が主流になったこと。
30年前には外張り断熱が、北海道でも見られたが、なぜ道内から撤退されていったか。
OMソーラーとの「開く・閉じる」論争の様子。 などに触れられている。

様々な断熱工法を改良していった歴史で、現代の標準工法へと進化してきている。
経緯がわかるから、なるほどと説得力がある。

高断熱住宅で難しいのは空気の流れである。
その中で悩ましいのが換気である。

10年ほど前から日本でも本格化されたのが「全熱交換の換気」
ヨーロッパの住宅では湿気を調整しない「顕熱型の換気」が多いが、それは積層構造で建物の作り方が違うので、建物中にこもる湿気を逃すところに主眼が置いてあるためだという。日本のように冬の過剰乾燥や夏の多湿を解消するためには、「全熱交換」換気がふさわしい。 というような感じで、一刀両断の説明がすがすがしい。

基本的には新住協のメンバーであれば、鎌田教授が長年一貫してブレずに主張してきた内容であるから、知ってることばかりであるが、総括されて全体を眺めるといろいろな気付きがある。

例えば、気候変動で気候のブレ幅が常識をはるかに超えるようになった。

温故知新で 復活する石油輻射暖房?

去年のように新潟市のマイナス9度になるような極寒の冬が、また来るかもしれない。

エアコンの空気の流れで全館暖房することが大きなベクトルではあるが、建物性能が向上したことにより、1台のFF式輻射ストーブで、全館暖房することが再び復活してもいいだろう。
という提言には興味を持った。

(例えばコロナのスペースミニ。こんな小型暖房機で余裕でいける)

外気温の低下や雪の影響で、1番肝心な時にエアコンが動かないというトラブルも、
FF石油ストーブには無縁だし、輻射式の暖房だから薪ストーブ的でポカポカ感が喜ばれそうだし。そんな感じでヒント満載でした。
(となると良質な針葉樹のフロアが必要だなと物色を始めたぐらいにして)

分かった気になっても やらないのが工務店のダメなところ

西方設計が2002年の著書で、床下暖房の原理と方法について記述して、何万部も売れて世の実務者は目にしたわけだか、早々に実践した人間はほとんどいなかった。
新潟でエアコンで床下暖房をしたのは、私が最初のはずで、ファーストペンギンである。

鎌田教授のこの本は、高断熱住宅の総括であり、実践のアイディアに溢れている。
鎌田方式の冷暖房方式も極めて合理的で、特に西日本のように冷房ニーズの高いエリアに有効な手法として広まっていくことだろう。

本書は全ての工務店と設計事務所は必須で、実務力が増すことは間違いない。特に 新住協の会員でない工務店の人ならば、これほど正しい知識が体系立って書いてある実践的な本は稀有だから、めちゃくちゃ勉強になるはずだ

一般ユーザーには この本はどうかというと 専門的すぎてマニア向けです。
でも 依頼する住宅会社へのレベルを測る試金石としていいかもしれません。

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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