今年の社員旅行は東北を巡る旅【③日目】
振り返ってみると、3日目の裏テーマは「自然」だったように思います。
1.猊鼻渓の舟下り
最初に訪れたのは、岩手県一関市にある「猊鼻渓(げいびけい)」です。
猊鼻渓は、砂鉄川の流れによってつくられた渓谷で、両岸にそびえる高さ約100mの断崖や、四季折々の自然を楽しめる景勝地です。
今回は、そんな渓谷を舟でめぐる舟下りを体験しました。

舟を操る船頭さんのお話がとにかく軽妙かつ雄弁で、乗船客を飽きさせません。
景色の見どころを案内してくれるのはもちろん、ユーモアを交えた語り口も印象的で、終始楽しませていただきました。
ゆっくりと進む舟に身を任せ、目の前に広がる美しい自然を眺めていると、日常の忙しさを忘れてしまうような感覚になります。
普段はなかなか味わえない、贅沢でゆったりとした時間を過ごすことができました。 

そして、舟下りを体験しながら、ふと「家づくりと似ているな」と感じました。
・舟下りでは船頭さんが船を操り、家づくりでは設計士や現場監督、職人さんが、それぞれの知識や技術を生かして形にしていく。
・川には流れや岩があるように、家づくりにも予想外の問題や変更が起こる。状況に応じて判断し、対応することが大切になる。
・舟下りは目的地にたどり着くこと、家づくりは家が完成することがひとつの節目。でも、そこに至るまでの過程にも価値がある。
・舟下りでは同じ船に乗る人たちと景色や時間を共有する。家づくりでも、お施主さんや設計士、現場監督、職人さんなど、さまざまな人が関わりながらひとつのものをつくり上げていく。
・「自分の思いどおりに進めること」だけが大切なのではなく、その時々の状況を受け入れながら、周りの人と協力して進んでいくこと。
家づくりも、完成した家だけでなく、そこに至るまでの過程や、関わった人たちとの思い出も含めて価値があるものだと、舟下りを通して改めて感じました。

2.高田松原津波復興祈念公園・震災遺構・伝承館
続いて訪れたのは、「高田松原津波復興祈念公園」と、園内にある「東日本大震災津波伝承館」、そして震災遺構です。
高田松原津波復興祈念公園は、震災で犠牲になられた方々を追悼するとともに、震災の記憶や教訓を後世へ伝え、復興への歩みを発信するために整備された公園です。
震災遺構や「奇跡の一本松」などを通して、震災の被害と復興について学ぶことができます。

東日本大震災が発生した2011年3月11日、当時の私は中学3年生でした。
揺れたこと自体は、なんとなく覚えています。
ただ、初めて津波の映像を見たときも、正直なところ、目の前で何が起きているのか、その本当の恐ろしさまでは理解できていなかったように思います。
それから大人になり、改めて当時の映像を振り返ってみると、感じ方はまったく違いました。
街が津波にのみ込まれていく様子、建物や車が流されていく光景。今になって見ると、ただただ恐怖を感じます。
その後も、熊本地震や能登半島地震など、各地で大きな地震が発生し、新潟でも地震による被害や影響を目の当たりにしてきました。
そうした経験を重ねる中で、地震という自然災害の恐ろしさを、以前よりも身近なものとして感じるようになりました。
私は今でも、定期的に地震や津波の映像を見返すようにしています。
決して気持ちのいいものではありません。それでも、災害の恐ろしさを忘れず、いざというときに自分がどう行動すべきかを考えるために、記憶を風化させないことが大切だと思っています。
実際に震災遺構を目の前にすると、その思いはさらに強くなりました。
鉄筋コンクリートでつくられた建物が、自然の力によって大きく変形している。その光景からは、写真や映像だけでは伝わりきらない、自然の圧倒的な力を感じました。
普段、私たちは建物の強度や耐久性について考えながら仕事をしています。しかし、どれだけ頑丈につくられた建物であっても、自然の脅威が想像を超えるものであることを、改めて思い知らされました。
住宅づくりに携わる者として、安全な住まいをつくることはもちろん、災害への備えや、万が一の際に命を守ることについても、常に考えていかなければならないと感じました。
3.陸前高田市立博物館
次に訪れたのは「陸前高田市立博物館」です。
この建物を設計したのは、公共建築や美術館などを数多く手掛けている建築家、内藤廣氏です。
東日本大震災によって大きな被害を受けた旧陸前高田市立博物館と「海と貝のミュージアム」の機能を引き継ぎ、新たな博物館として整備されました。鉄筋コンクリート造を主体とした地上2階建てで、地域の歴史や文化を未来へとつなぐ役割を担っています。
建物で特に印象に残ったのは、大きく張り出した屋根と、羽目板を張ったパネルを組み合わせた外壁です。
外壁は、細かな木の板が連なることで、木ならではの温かみとリズムが生まれています。また、屋根や庇は大きな存在感がありながら、先端部分や支える部材が繊細にまとめられており、建物全体を軽やかに見せているのが印象的でした。
木材の使い方だけでなく、屋根と外壁の取り合いや、部材同士のバランスなど、細部まで考えられたデザインに目が留まりました。
住宅でも、外壁の張り方や軒の出、窓まわりの納まりによって建物の印象は大きく変わります。公共建築ならではのスケール感はありますが、素材の見せ方や細部へのこだわりは、普段の家づくりにも生かせる学びがあると感じました。

4.リアス・アーク美術館
続いて訪れたのは、宮城県気仙沼市にある「リアス・アーク美術館」です。
リアス・アーク美術館は、建築家・石山修武氏の研究室が設計を担当した美術館で、
鉄筋コンクリート造を主体に一部鉄骨造を組み合わせた、地上3階建ての建築です。
この建物の見どころは、傾斜や曲面を取り入れた独創的な外観と、鉄骨などの構造を空間のデザインとして見せている点です。
直線的に整えられた一般的な建物とは異なり、壁や屋根の形に変化を持たせることで、見る角度によって印象が変わる力強い外観になっています。また、館内では天井の高い空間や吹き抜けが広がり、構造体も空間の一部として存在感を放っています。
こうした形状を実現するには、デザインだけでなく、構造や材料の加工方法、施工の精度など、さまざまな工夫が必要になります。完成した姿を眺めながら、実際に施工する立場としても興味を引かれる建築でした。
用途や規模は違いますが、素材や構造を単なる機能として扱うのではなく、建物の魅力を生み出す要素として考える姿勢は、住宅づくりにも通じるものがあると感じました。
同じ建築でも、設計士の考え方や施設の役割によって、表現が大きく変わることを実感できた見学となりました。

5.気仙沼プラザホテル
3日目の宿泊先は「気仙沼プラザホテル」です。
気仙沼湾を一望できる高台に位置し、港町ならではの景色と、地下約1,800mから湧き出る深層天然温泉を楽しめるホテルです。
震災について学び、自然の脅威を改めて感じた一日。そんな一日の締めくくりに、海を望む景色や温泉でゆっくりと過ごせるのは、ありがたい時間でした。
観光を楽しむだけでなく、社員同士で一日を振り返りながら過ごす時間も、社員旅行の醍醐味です。
普段の仕事から少し離れ、同じ景色を見て、同じ経験を共有することで、社員同士のつながりも深まったように感じます。
3日目を振り返って
今回の社員旅行3日目を振り返ると、やはり裏テーマは「自然」だったように思います。
猊鼻渓では、長い年月をかけてつくられた自然の美しさに癒やされました。
一方で陸前高田では、自然が時として人間の想像をはるかに超える脅威となることを学びました。
近年では、全国各地で豪雨による災害も増えています。地震や津波だけでなく、豪雨や洪水など、私たちの暮らしはさまざまな自然災害と隣り合わせです。
これからの時代は、自然災害を完全に防ぐことだけを考えるのではなく、いかに災害と向き合い、日頃から備え、そして災害が起きたときに命を守り抜くかが問われているのだと思います。
しかし、今回の見学を通して、人間の力も決して負けてはいないと感じました。
震災で大きな被害を受けた街に、たくさんの人が力を合わせて施設を再建し、新たな堤防を築き、暮らしを取り戻していく。失われたものをただ元に戻すだけでなく、次の災害に備えながら、新しい街をつくり上げていく。
そこには、一人ひとりの努力だけでなく、多くの人が協力し合う力があります。
これは、私たちの家づくりにも通じるものがあると感じます。
一棟の家が完成するまでには、設計士、現場監督、職人さん、そして多くの協力業者の力が必要です。それぞれが知識や技術を持ち寄り、力を合わせることで、安全で安心して暮らせる住まいが完成します。
自然の脅威を正しく理解し、備えること。そして、人と人が協力し合い、より良い未来をつくっていくこと。
今回の社員旅行で得た学びを、これからの仕事にも生かしていきたいと思います。
観光だけでは終わらない、たくさんの気づきがあった3日目となりました。

