② 収納計画にありがちな固定観念

住宅設計
相模 稔相模 稔

② 収納が多い家は、本当に暮らしやすいのか

プランを見るとき、多くの人が気にするのが収納です。

「収納は多い方がいい」
「パントリーが欲しい」
「シュークロークが欲しい」
「ファミリークローゼットが欲しい」
「サニタリー収納も欲しい」

こうした要望はよくあります。

たしかに収納は大事です。
収納が足りない家は、暮らし始めてから確実に困ります。

ただし、ここで考えたいのは、収納は「量」だけでは決まらないということです。

住宅会社の中には、小さな収納を家中にたくさん散りばめることを好む会社があります。
 

営業トークとしては、とても分かりやすい。
「ここにも収納があります」
「ここにも入ります」
「生活の場所ごとに収納があります」

そう言われると、なんとなく便利そうに感じます。

しかし、小さな収納が家中に分散していると、実際には何をどこにしまったか分かりにくくなることがあります。
奥行きが浅すぎたり、棚の寸法が中途半端だったり、扉ばかり増えて壁面が使いにくくなることもあります。

収納は、ただ多ければよいのではありません。

大事なのは、家の中の「在庫管理」がしやすいことです。

どこに何があるか分かる。
家族全員が使いやすい。
出し入れしやすい。
不要なものを溜め込まない。
そして、収納のために無駄な面積を増やしすぎない。

この視点が必要です。

パントリーは本当に必要か

近年の家づくりで人気があるのが、パントリーです。

食品や日用品をまとめて収納できるので、便利な場所ではあります。
共働きでまとめ買いが多い家庭、子どもが多い家庭、米や酒や保存食を多く持つ家庭には、確かに役立ちます。

ただし、すべての家庭に大きなパントリーが必要かというと、そうではありません。

近くにスーパーがある。
日常的に買い物に行ける。
食品を大量にストックする習慣がない。
冷蔵庫と少しの棚で足りている。

そういう暮らしであれば、大きな食品庫は本当に必要でしょうか。

ストックが多すぎると、何を持っているか分からなくなります。
奥に入れた食品を忘れて、賞味期限が切れる。
同じものをまた買ってしまう。
結果的にフードロスにつながる。

大容量のパントリーは、郊外型のまとめ買い文化には合います。
車で大型店に行き、食品や日用品を大量に買い込む暮らしには合うでしょう。

しかし、街に近く、日常的に買い物できる暮らしなら、そこまで大きな食品庫が必要かは考えた方がいい。

災害時の備蓄という意味はあります。
ただ、それも家族構成に応じて3日分から1週間分程度をきちんと管理できればよい。
大きすぎるパントリーをつくったから安心、という話ではありません。

大事なのは、パントリーの有無ではありません。
その家族の買い物の頻度、食生活、ストック管理の能力に合っているかどうかです。

収納は、分散よりも「まとまり」が使いやすいことが多い

私自身の好みで言えば、収納は細かく散らばせるより、ある程度まとまっていた方が使いやすいと考えています。

例えば、1階に生活用品のための納戸を設ける。
掃除用品、日用品のストック、食品の一部、季節の小物などをそこに集約する。

畳3枚分ほどあれば、かなりのものが収まります。

2階には衣類を中心としたファミリークローゼットを設ける。
衣類だけでなく、寝具や季節用品もそこにまとめる。

こうすると、家の中のストックを見渡しやすくなります。
同じものを二重に買うことも減ります。
収納のための扉も減らせます。
壁面も有効に使いやすくなります。

もちろん、すべてを一か所に集めればよいわけではありません。
使う場所の近くにあった方がよい収納もあります。

ただ、何でもかんでも細かく分散させるより、家族が管理しやすい収納のまとまりをつくる方が、結果として暮らしやすいことは多いです。

収納計画で大事なのは、面積ではありません。

何を、どこに、どれだけ持つ暮らしなのか。

ここを考えずに収納だけ増やすと、家は大きくなり、建築費も上がり、ものも増えます。

面積は無料ではありません。
「あったら便利」を全部入れると、家はどんどん高くなります。

広すぎるサニタリーは、本当に必要か

近頃は、広いサニタリーやランドリールームを希望する方も増えました。

洗う→ 干す→ 畳む→ しまう。

この一連の流れを考えることは、とても大事です。
特に新潟のように、冬や梅雨時期に外干ししにくい地域では、室内干しや乾燥機の計画は重要です。

ただし、ここでも「広ければよい」とは限りません。

最近はガス衣類乾燥機や高性能な電気乾燥機を採用する家も増えています。
乾燥機を使う暮らしなら、大量の洗濯物を室内に干すための広いスペースは、必ずしも必要ありません。

洗面台を2人同時に使いたい場合でも、間口が1200mm程度あれば対応できることが多い。
脱衣スペースも、必要な寸法を押さえれば、やみくもに広くする必要はありません。

洗面と脱衣を分けたい場合も、方法はいろいろあります。
トイレの前に洗面を設けて手洗いを兼ねる。
脱衣だけをゆるく仕切る。
建具で完全に閉じると暗くなる場合は、ロールスクリーンや防水性のあるカーテンで軽く仕切る。

重要なのは、広さそのものではありません。

洗濯機の位置。
乾燥機の位置。
洗濯物を畳む場所。
衣類をしまう場所。
タオルや下着を置く場所。
入浴前後の動き。

これらが自然につながっているかです。

広いサニタリーをつくったのに、衣類収納は遠くの寝室にある。
結局、乾いた服がランドリールームに山積みになる。

こうなると、面積をかけた意味が薄くなります。

広いサニタリーより大事なのは、衣類の流れです。

 

シュークロークは、靴よりも「外のもの」をどうしまうか

玄関収納については、少し悩ましいところです。

靴が多い家庭もあります。
奥さんの靴だけで何十足もある、というケースも実際にあります。

その場合は、下駄箱を大きくすれば靴はかなり収納できます。

問題は、靴以外のものです。

家族のコート。
傘。
長靴。
子どもの部活用品。
アウトドア用品。
ゴルフバッグ。
スキー板。
雪かき道具。
ベビーカー。
外遊びの道具。

こうしたものをどこに置くか。

シュークロークが便利な場合もあります。
ただし、何でも玄関に詰め込めばよいわけではありません。

例えば、スキー板やゴルフバッグ、アウトドア用品などは、玄関の中よりも車に近い外収納の方が便利なことがあります。
雪かき道具も、家の中ではなく外部収納の方が自然です。

冬のコートも、必ずしも大きなシュークロークが必要とは限りません。
玄関ホールや廊下に、家族分のコート掛けを用意するだけで足りることもあります。

シュークロークは便利です。
しかし、何をしまうための場所なのかが曖昧なまま広くすると、ただの物置になります。

玄関収納で考えるべきことは、靴の数だけではありません。

外で使うものを、どこに置けば一番自然か。

これを考えることです。

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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