④ 良いプランの見分け方

住宅設計
相模 稔相模 稔

図面の上で、24時間暮らしてみる

提示されたプランが良いものかどうかを判断するには、まず図面の上で実際に暮らしてみることです。

朝起きて顔を洗い、朝食をとる。子どもが学校へ行き、自分も仕事に出る。夕方に帰宅し、買い物袋を持って玄関に入り、食品をしまい、料理をする。洗濯をして、お風呂に入り、夜はリビングでくつろいでから眠りにつく。

この一日の流れを、図面の中でたどってみます。

平日だけでなく、休日はどうか。晴れの日だけでなく、雨の日や雪の日はどうか。
さらに、春夏秋冬で暮らし方はどう変わるのか。
子どもが小さい時期、成長した時期、夫婦だけになった時期まで想像してみると、見えてくるものがあります。

買い物から帰ってきたとき、食品をしまう場所は自然か。
濡れた傘やコートはどこに置くのか。
冬の長靴はどこにしまうのか。
洗濯物はどこで乾かし、どこに収納するのか。
リビングでくつろいでいる横を、家族が何度も通らないか。
来客時に、洗面や脱衣の生活感が見えすぎないか。
トイレの位置や音は気にならないか。

図面は、ただ眺めるものではありません。
その中で一度暮らしてみることで、プランの良し悪しが見えてきます。


家具を置くと、プランの良し悪しは見えやすい

もうひとつ大事なのが、家具を置いて考えることです。

リビングが何帖あるか、ダイニングが何帖あるか。
数字だけを見ても、実際の使いやすさは分かりません。

ソファ、テレビ、ダイニングテーブル、収納家具、本棚、ゴミ箱、観葉植物。そうした暮らしに必要なものを図面に置いてみると、急に現実が見えてきます。

窓が多すぎて家具を置く壁がない。ドアが多くて収納家具の位置に困る。通路が多くてソファの場所が落ち着かない。テレビの位置が不自然になる。ダイニングの椅子を引くと、通路が狭くなる。

こういう問題は、家具を置いて初めて分かります。

良いプランは、家具が自然に納まります。
逆に、家具の置き場に困るプランは、暮らしも落ち着きません。

窓が多い家が、必ずしも良い家とは限りません。回遊できる家が、必ず暮らしやすいとも限りません。壁があることも、住宅にとっては大切です。

暮らしには居場所が必要です。
居場所には家具が必要です。
そして、家具を置ける壁が必要です。

この当たり前を忘れないことです。


暗い場所がないか、風が抜けるか

せっかくの戸建て住宅なのに、昼間から電気をつけないと暗い場所ばかりでは残念です。

もちろん、家中どこも明るければよいという話ではありません。
落ち着いた陰影も、住まいの魅力です。ただし、日中でも常に薄暗く、空気がこもる場所が多い家は、暮らしていて気持ちのよいものではありません。

春や秋の良い季節に、窓を開けて風が通るか。
湿気がこもりやすい場所はないか。
北側の部屋が沈んだ印象になっていないか。
階段や廊下にも自然光が入るか。

こうした点も、プランを見るうえで大切です。

特に住宅密集地では、単純に南に大きな窓を取ればよいわけではありません。
南側に隣家が迫っていれば、思ったほど光は入りません。
西日が強ければ、夏は暑くなります。東西の窓は、日射の扱いに注意が必要です。

方位だけでなく、隣家、道路、庭、塀、植栽まで含めて考える。
そこまで見て、ようやく光や風の計画が判断できます。


平面図だけでなく、立体で考える

住宅のプランは、平面図だけでは判断できません。

階段の位置、天井の高さ、窓の高さ、屋根の形、日射の入り方。
近年は吹き抜けのある家も多く、こうした要素は平面図だけでは見えにくいものです。

冬の太陽は低く、夏の太陽は高い。
冬の日射をどこまで取り込むのか。夏の日射をどう遮るのか。
軒や庇はきちんと機能するのか。吹き抜け上部に熱がこもらないか。
冷暖房の空気はどう流れるのか。

こうしたことは、断面で考える必要があります。

外観も同じです。間取りだけを優先してつくると、外から見たときに窓の位置がバラバラになり、落ち着かない外観になることがあります。

住宅設計は、内部だけで完結するものではありません。中から外を見て、外から中を見る。平面で考え、断面で確認し、立体として整える。この行き来が必要です。

良いプランは、内部の暮らしと外観が矛盾していません。
窓の位置にも理由があり、屋根の形にも無理がありません。


庭と外構まで含めて、初めてプランになる

家づくりで忘れられがちなのが、庭と外構です。

多くの人は、まず建物の間取りに関心が向きます。その結果、敷地いっぱいに建物を置き、余った場所を駐車場にして、最後に少し植栽を入れる。そういう進め方になりがちです。

しかし、暮らしの豊かさは家の中だけで決まりません。

リビングから何が見えるか。ダイニングから庭が感じられるか。窓の外に緑があるか。道路からの視線を、植栽や塀でやわらげられるか。外に出たくなる場所があるか。

これらは居住性に大きく関係します。

大きな庭でなくても構いません。小さな坪庭でもよい。窓の先に一本の木があるだけでもよい。隣家の視線を避けながら、空を切り取るだけでもよい。

大事なのは、室内から外をどう感じるかです。

間取りだけをいじっていると、この視点が抜け落ちます。その結果、完成してからカーテンを閉めっぱなしの家になってしまう。これは非常にもったいないことです。

良いプランは、庭や外構を後回しにしません。建物と外部空間を一体で考えています。


空調計画を重ねると、プランの弱点が見える

最初の間取りができたら、空調計画も一度は重ねて考えるべきです。

エアコンはどこにつけるのか。
冷房の風はどちらへ流れるのか。
吹き抜けや階段での空気の循環は合っているか。
個室の温度ムラはどうなるか。
室外機はどこに置くのか。隣家の寝室の前に向いていないか。

こうしたことは、間取りが固まってから考えると苦しくなります。

エアコンをつける壁がない。室外機の置き場がない。
冷房が届かない。空気が循環しない。こうなってからでは、修正が難しい。

住宅の快適性は、断熱性能だけでは決まりません。空調がきちんと計画されているかどうかも重要です。特に高断熱住宅では、少ないエネルギーで家全体を快適にできる可能性があります。そのためには、間取りと空調がけんかしていてはいけません。

良いプランは、設備の置き場まで自然です。エアコン、室外機、給湯器、換気設備が、無理なく納まるように考えられています。


10年後、30年後の暮らしを想像する

プランを見るときは、今の暮らしだけで判断しない方がよいです。

子どもが小さい時期、成長した時期、巣立った後。夫婦だけの暮らし。親の介護が必要になる可能性。自分たちが年を取ったとき。

暮らしは変わります。

今は必要な部屋が、将来は空き部屋になるかもしれません。
逆に、今は気にしていない1階の寝室が、将来とても大事になるかもしれません。

大きな家は、建てるときだけでなく、維持するにもお金がかかります。掃除も大変ですし、冷暖房する面積も増えます。外壁や屋根のメンテナンス費用も大きくなります。

一方で、小さくしすぎて暮らしに余裕がなくなるのも困ります。

大切なのは、今の要望を全部入れることではありません。将来の変化まで含めて、ちょうどよい大きさと構成を考えることです。

この部屋は10年後も使うだろうか。子どもが出た後、この空間はどう使うだろうか。老後も1階で生活できるだろうか。メンテナンスしやすい家だろうか。

こうした問いを持つだけで、プランの見え方は変わります。

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

になって
お得な情報をGETしませんか?

  • 会員限定資料一式を無料送付
  • 家づくりに役立つ最新情報を無料配信
  • 会員限定人気記事を無料公開
  • 会員限定e-BOOKを無料公開
登録はです!