収納・回遊動線・家事動線にだまされないために
住宅設計において、よく「良いプラン」「悪いプラン」という言葉が使われます。
しかし、何をもって良いプランと言うのでしょうか。
◯ 収納が多いこと。
◯ 回遊動線があること。
◯ パントリーやシュークロークがあること。
◯ 家事動線が短いこと。
たしかに、どれも便利そうに見えます。
住宅会社の営業トークでも、こうした言葉はとても使いやすい。
けれども、私はそれだけで良いプランとは思いません。
良いプランとは、流行りの要素をたくさん盛り込んだ間取りではありません。
その敷地で、その家族が、無理なく、気持ちよく、長く暮らせるように整理されたプランです。
もっと短く言えば、プランは、
「敷地 × 暮らし」
でできています。
この掛け算がうまくできているかどうか。
そこに、良いプランと悪いプランの違いが出ます。
プランは、建物だけを見ても分からない
住宅プランを検討する多くの人は、まず家の間取り図を見ます。
リビングは何帖か。
収納はどれくらいあるか。
キッチンから洗面所は近いか。
玄関にシュークロークはあるか。
もちろん、それも大事です。
しかし、本当に見るべきなのは、建物の中だけではありません。
敷地全体の中で、その建物がどう置かれているかです。
車は停めやすいのか。
車から玄関までのアプローチは自然か。
道路からリビングが丸見えになっていないか。
逆に、リビングから気持ちのよい景色が見えるか。
庭と室内のつながりはあるか。
落雪や季節風に対して無理がないか。
室外機や給湯器の置き場まで考えられているのか。
このあたりを見ないまま、家の中の間取りだけで良し悪しを判断すると、失敗します。
よくあるのが、リビングの大きな窓が道路に向いていて、完成後ずっとカーテンを閉めっぱなしになる家です。
図面上では「明るいリビング」に見えます。
しかし実際には、通行人や隣家の視線が気になって、窓を開けられない。
せっかくの大開口も、暮らしの中では生かされない。
これは、間取りだけ見ていて、敷地を見ていない典型です。
良いプランは、窓の位置ひとつを見ても理由があります。
光を入れるため。
風を抜くため。
庭を見るため。
外観を整えるため。
窓は、ただ外壁に穴を開ければよいものではありません。
そこから何が見えるか。
外からどう見られるか。
そこまで考えられて、初めて意味を持ちます。

良いプランは、まず「素直」である
良いプランの大原則は、素直であることです。
ここで言う素直とは、見た目が普通という意味ではありません。
構造的にも、暮らし方としても、施工としても、無理が少ないという意味です。
具体的には、建物の形はできるだけ出っ張りや引っ込みが少ない方がよい。
長方形を基本にした、整理された形が望ましい。
1階と2階の壁の位置も、なるべく揃っている方がよい。
上下階の間取りが大きくずれていると、構造的に苦しくなります。
屋根の形も同じです。
複雑な屋根は、見た目に変化は出ますが、雨仕舞いが難しくなり、将来のメンテナンスリスクも増えます。
新潟のように雪や風雨の影響を受ける地域では、なおさら屋根の素直さは大事です。
住宅は、完成した瞬間だけきれいなら良いわけではありません。
10年、20年、30年と住み続けます。
構造に無理がない。
雨仕舞いに無理がない。
断熱・気密の施工がしやすい。
メンテナンスもしやすい。
コストも過剰に膨らまない。
こうした条件を満たすプランは、たいてい素直です。
逆に、見た目のインパクトや要望の詰め込みを優先して、建物の形が複雑になりすぎているプランは注意が必要です。
良い設計とは、奇抜な形をつくることではありません。
暮らしと敷地と構造を整理して、無理のない形に落とし込むことです。
*このコラムは5回連載のシリーズになってます。引き続きご覧ください。

