脱炭素に向けて住宅はどうあるべきなのか?

admin

「脱炭素住宅検討会」キーマン公開取材

菅内閣総理大臣が、2050年でのゼロカーボン化を宣言してから、
住宅・建築物におけるエネルギー性能の向上に向けた

規制・制度のあり方について議論が行われております。


新建新聞社が一連のキーマン4名への公開取材を行い、
再エネタスクフォース(TF)への期待、
今後の脱炭素施策のあり方や

脱炭素・高性能住宅の普及方法が話された。


後半は、工務店実務者3名も加わり、(代表の相模も参加)
地域の状況や推進への課題についての説明を行いました。

この様子は6/25日 FBでライブ配信されました。

相模の意見

さて、準キーマンとして意見が求められているので、
まとめさせていただきます。

① 「断熱性能をHEAT20のG2へ」は、賛成

G2グレードは、局所間欠暖房と同じエネルギーで、全館暖房できるグレード。
昨今の快適を追求するユーザーの希望に応えるべく、全館空調が当たり前になってきました。

大手HMは一部を除いて、Ua値0.5~0.6程度の性能に関わらず、全館空調物件を増やしている。
大容量PV搭載で増エネを相殺しているつもりなようだが、手順が逆だ。

6地域は窓のグレードあげればいいだけで、
技術的なハードルは無いに等しい。(Ua値0.48)

*鉄骨系プレハブは5地域以北が困難であるが、すでに木造比率を

4割程度まで増やしているのでそれを加速すればよいし、

付加断熱のパネルラインの開発をすればよい。

5地域以下は付加断熱が必要になるのでハードルが上がります。

オガスタの直近2年分の実績の平均性能数値で。Ua値0.34

半分はG2は満たしてません。だからけっこう大変ではあります。
ただし、バックキャスティングの発想でやるべきなので賛成です。

断熱基準の強化に伴い、「質を伴わない新築住宅の規制」につながる。
2040年には10件に3件が空き家になるほど、家余りとなるが、
こうしたストックの性能向上型リノベへと誘導すべき。
性能強化は、実はストック化社会への大きな後押しになる。

 

 

 

 

② PVの設置義務化が、新築外皮性能向上より困難。

広まる「太陽光は載せるな!」
屋根に載せることへの抵抗感が根強い。
日本海側の日射量不足で元が取れないのではないか?
雨漏りのリスクがあるのではないのか?
こうした事実と異なるガセネタを業界関係者でもいう人は多い。

積雪地はどうなんだ?
実際の問題として、新潟の山間部は積雪が多く、
メーカー保証の対象外の場合もあるし、
落雪の問題も抱えている。

デザインで毛嫌いする人も
実際ガルバリウム葺きの比率がここ近年増加し、粘土瓦のシェアを奪っているが、
PV普及も要因と考えられる。素材感の不一致があることは否めない。
腰屋根にすることや、搭載する向きの工夫など、
PVを載せても美しい佇まいをどうするか?
というソフトでの技術についてが 一切話題にはならないのは片手落ちだ。

(住宅での脱炭素には、①断熱での暖房エネ削減と
②PV搭載での創エネの2点が欠かせない)

オガスタ新潟、直近のPV搭載率は50%
との発表に、「載せない言い訳をしているのは見苦しい」 ヨーロッパを見ろ
的な意見もあったが、敵と味方を間違えたポジショントークに 瞬間思った。
軒ゼロの片流れを基本設計とするなら楽だが、雪国で景観への配慮もしながら、
お客さんとのやりとりで最終的に決まってしまう。これが現実ではある。
大手HMは軒並み9割以上の搭載率となっている聞くので、
我々工務店も努力が足りないというのも事実である。

公開取材でのご意見:
太平洋側ではエネ自給率200%くらいやれるだけやって、
日本海側の自治体は、風力に有利なんだからこうした創エネも配慮して
やれるだけやってもらへばよいのでは?
との意見も出て救われた 気分になる。
国全体の問題ではあるが、地域の現実も見ないと
原理主義・理想主義で終わるだけである。

 

③ 脱炭素の本丸は 既存の断熱改修

新築だけに規制の網をかけても、全く以て不足である。
集合住宅並びに、既存住宅のボリュームは膨大だ。

新耐震基準より築浅の中古に対しての改修工事の推進を行う。
残すべき家と残さなくていい家の
性能的な線引きをシンプルにするとそうなる。

断熱改修技術の標準化と、技能の習得を進める政策を求めます。
現在、インスペクションから性能向上リノベまでやれる工務店は極めて少ない。
起業化を促し、業界を更新させることへとつながる。

中古売買の際にBELS表示の義務化は有効
基準のベースになっている断熱基準そのものが低すぎる問題がある。
断熱基準の見直しと同時に、BELS表示義務化も行う。
すでにヨーロッパでは賃貸住宅中古住宅では、表示の義務化がされている。

 

住宅貧乏から日本を脱出させる

かたや日本では、
中古住宅の戸建ては、どんなに程度が良かろうが、
25年経たら一律で ほぼゼロ円と査定される。
耐震性と、建物の燃費も公式に証明できれば、市場ができてくる
これができないと、永遠に住宅貧乏から日本は脱出できない。

質を伴わない価格優先の新築分譲住宅の抑制。
利便性の良い街中に、60坪の空き家が出ると、それを解体し、
30坪に2つに分割し、建売が建てられることがあるが、完全に時代逆行である。

土地分割規制の条例:自治体の独自の制度設計の際に条例化。
低価格帯のユーザを性能向上リノベへ誘導する政策が必須。

新潟における状況:

新潟県の状況:
環境企画課が省エネの取り組みのキャンペーン(啓蒙)を行なっている。
昨年は「省エネ家電の買い替え」を啓蒙。
今年はそれを高断熱住宅まで広げるかというレベル。
山形・長野・鳥取のような、断熱の独自基準の策定の話は聞かれない。
県は地場産業の育成が主眼で、住宅関係となると、
県産材利用といった分野で注力していている印象。

背景として、新潟県は広い。
温暖な新潟市は5地域。
山間部は豪雪地で、4地域で差があるため、
一律的な規制に、二の足を踏んでいる。との話もある。
しかし、似た条件の山形・鳥取はやってるので、やらない言い訳でしかない。

新潟市の状況:
環境行政課の温暖化対策室が旗振り役で、
「新潟市独自の基準策定と認証制度」の制定に向けた動きがある。
そこで、今回の国の方向性を見守っている。

民間の任意団体、「新潟エコハウス推進チーム」(私:相模が副代表)
と連携し、ユーザーと事業者の2方向への、啓もう活動を行う準備に入っている。
市の担当者と推進チームの有志で、キーマンの竹内昌義氏を山形まで訪ね、
アドバイスをいただくことが計画されてます。
(動画になる予定)

ただ、新潟市はゼロカーボンシティ宣言までしておいて、やることやらねばならぬが、
市からは啓もう活動の予算がつかないし、環境省へも助成金の申請をしたが
採択されなかった。。。。 笛吹けど踊らずどころか、笛すらない状態。
さぁ どうしたものか?
どうやって 実現するのか?ゼロカーボン。

前先生が再びTFに登場

6月28日 16:00からに、東大大学院・前先生が、
「再エネTF(タスクフォース)」にて、プレゼンテーションを再び行います。
「このまま低性能な基準で終わってしまったら、次世代に汚名を残してしまう」と、
気合十分ですが、果たして結果はいかに?

TFは公開されますので、こちらから見ることができます。
【公式】規制改革チャンネル

国交省は 断熱が嫌いで ZEHはラブ

ここからは余談です

経済産業省・国交省・環境省3つの省が絡んでくるために、
縦割りの弊害が起きている。
そこで 河野大臣がタスクフォースを結成、各省の担当者と有識者集めて議論を行った。

その後、「あり方検討会」が開かれ、東北芸工大の竹内教授などの有識者の方々の意見を聞き、住宅の断熱性能のありかたと、再エネの基準が決められようとしている。


 その詳細は、ウェルネストホームのHPで今泉さんが書いてあるのをリンク張ります。

国交省は、一応の意見を聞いたというアリバイ工作で、実際のところはすでに、
断熱の義務化の水準は、等級4レベルの極めて低い水準にするシナリオがあるのではないのか?
良くてもせいぜいZEH水準(Ua値 0.6)でお茶を濁そうとしているのではないか?
前さんは懸念している。

我々もそういった結果になることは、気候正義を物差しにすると、最悪な事態だと考える。

プレハブ協会のような業界団体のロビー活動の影響なのか?
性能は低いままでも、PV搭載を加速すればよいではないか。と考えているようで、
何をどう説明しても、ZEH基準以上の性能にさせない! 意志を感じる。という。

新住協の鎌田代表が、かつて国交省に派手に噛みついたのか?
そうした過去の怨みで、「高断熱なんていうやつは ろくなやつがいない!」
国交省は語り継がれてきているのではないか? とすら、私どもの間でささやかれている。
他にもかつての武勇伝はたびたび耳にしているから そうなのかもしれない。

過去のうらみはどうでもいいから、国交省には、
未来に向けてのバックキャスティングで、ロードマップを示して欲しい。

6/28追記】

6月28日開催された11回タスクフォースでは、前先生のプレゼン、TF委員の鋭い質問もあって、もう一度再エネTFを開き、時間をきちんととって説明・議論すべきとの河野大臣の裁定により、ひとまず、「低い基準での義務化」は回避となりました。

会議中、前先生が、この記事を会議で表示し、地方での工務店の事例として紹介くださいました。

 

 

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