新潟西区の液状化被害からどう立ち直るか?

土地・地盤
相模 稔相模 稔

報道等でご存じのように、元旦の夕刻に生じた「令和6年能登半島地震」での、
新潟市での被害は主に、新潟市西区に集中しています。

従来は地震での被害としたら、揺れによる直接的な建物の破壊と、津波の被害が想定されてました。しかし、今回新潟市西区を中心に生じているのは液状化現象による建物と敷地の被害です。

家屋被害が生じていることの証明の「罹災証明」の申請は、77%西区に集中し2387件もの申請がされており、このうちの一定数が、沈下や傾斜の被害が生じていると考えられます。

新潟市の液状化被害は、新潟地震の際に液状化した場所で再び生じているのが特徴です。
特に、新潟西郵便局の被害が報道された、寺尾エリアと、黒埼の善久エリアの被害が深刻です。

(2024/1/2 相模撮影:西区善久の液状化被害)

液状化による沈下被害には
「建物が沈下してしまうケース」
「敷地が沈下してしまうケース」その2つがあります。

それを分けるのは、
地盤改良工事をしたのか、してないのかが分かれるポイントになります。

建築の前に、地盤調査を行い、軟弱地盤で建物が沈んでしまう可能性がある場合は、
地盤改良工事を行います。ほとんどのケースが改良杭を地面につくります。

杭のある建物は、今回の地震では建物そのものが沈下する事は防げております。
しかし、建物はそのままでも、周辺の地盤が沈下する現象が起きると被害が生じます。

敷地が沈下することの被害:

まずは、給水排水の配管が破断してしまう被害です。
給水管が破断してしまえば、水が出ませんから、すぐわかりますが、排水管が破裂している場合は、すぐに被害に気づきません。
最悪の場合、床の下に排水が放出されたままになって、後になって被害に気づくかもしれません。

詳細:地震後の配管破損例

敷地内部で液状化現象が生じている場合で、
従来の建物と敷地のレベル差が生じているならば、配管が破断している可能性はかなり高いです。
液状化していなくても、建物が大きく揺さぶられている場合だと、建物の外周付近に、地面の亀裂が生じる時もあります。こういったケースでも破断していた方もおりました。

また、液状化による沈下被害で、
敷地のレベルが従来と変化が出ることでの被害もあります。外部の物置が傾いたり、駐車場の水勾配が狂って水溜まりになったりすることになります。

建物そのものが沈下する被害:

地盤調査によって、地盤の性質が良いと判断され、地盤改良工事が不要との判定が出た住宅は、ベタ工事をして、杭の工事はしないことが多かったはずです。

このように中途半端に地盤が良いが、しかし、地震の揺れにより液状化が発生した場合は、建物自体が沈下してしまうことになります。

均等に建物が地面に沈んでいくと傾斜がないために、住んでる人にはあまり深刻な被害になっていないような印象ですが、建物の排水が機能しなくなり、場合によっては床の下に水が侵入してくる可能性もあり、長期的には放置できません。

ほとんどのケースは、不同沈下になり、建物が傾いてしまいます。
1000分の5を超える傾きがあった場合は、傾きに気づくようになり、
大きいほど生活に重大な支障が生じるとされています。
地震保険の損害認定では17/1000を超える傾斜は全損となります。

(セコム損保の資料より)

いずれにしろ、建物自体が沈下したり、傾いた場合は、沈下修正工事をする必要になります。沈下修正には、いくつかの方法があり、被害の状況や予算などでどう治すかが計画されます。

沈下・傾斜した家屋を治す工法

詳しくは、YouTubeチャンネル家づくりの知識にて、曳家の岡本様が解説してくれた動画を用意しておりますので、ご参考にしてください。

07:56 アンダーピニング工法とは?
09:39 薬液注入工法とは?
10:28 土台揚げ工法とは?

おもに4つの方法があります。(図表はサトウ設計さんが製作)

 

すぐに家屋改修の工事に取りかかれない?

家屋に被害の生じた方は、一刻も早く建物を直したいと考えたいと思うのが当然ですが、
すぐには取り掛かれない、いくつかの障壁があります。
曳家の岡本さんは、東日本大震災の際の、千葉浦安の沈下被害での修正に多く携わってきた経験があります。その経験を踏まえて、教えていただきました。

① 液状化が収まったと判断してから着工
液状化現象が収まってから出ないと、沈下修正を行っても、再び沈下してしまいます。
浦安の場合は、地震から3ヶ月程度明けてから工事に着手できたとのこと。
しかし、地盤工学の専門家の見解など、今回ではどの程度の期間となるのか確認すべきで、行政の指導のもとに着手すべきかと思われます。

また、液状化現象は地盤が砂地で生じやすく、基礎の下に坑道を掘るアンダーピニング工法は作業中に崩壊すると作業員の命の危機にも繋がります。余震や液状化が収まらない限りは危険です。

② 液状化による敷地の移動
液状化によって、敷地が元の位置から「流れている」ケースが生じています。
境界杭が数10cm移動していたり、隣家との高低差を土留めで処理している、その土留が移動して、従来の隣家敷地へ移動しているケースもあります。
境界は紛争要因ともなりうる、困った問題です。
この問題は、工務店という一建設業者だけで解決できる問題ではありません。

③ 地域全体の地盤沈下
住宅だけでなく、地域全体が沈下している場合もあります。
善久エリアはかつて信濃川の底であったところで、広範囲で液状化が発生した。
浦安市ではGPSデータをもとに早期に道路の高さを決めました。そうしないと配管等の復旧工事が進まない為です。家の水平に直すことが先行した場合、再度配管を後で道路に合わせる必要も出てきます。

以上は、岡本さんの経験から教えていただいた障壁です。さらに、家屋再建へは障壁があります。

④ 建築予算が確保できるか?

沈下修正の工事を行おうとすると、数百万円から内容によっては1000万円を超える工事費用がかかります。ココで重要になるのは、地震保険に付保していたかどうか?
内容にもよりますが、地震保険の保険金が降りれば、経済的なダメージは致命的にはならないようです。
高齢者だけの世帯で、ローンの問題もあり借り入れが困難で、地震保険も入っていないような世帯が数多くあります。非常に気の毒ですが、やれるだけの回復工事を行い、我慢して住み続けていくしか無いことでしょう。

⑤ 沈下修正工事の業者と、担当技能者不足の問題

工務店でも監督技能者が不在で、沈下修正の知識もなく、どう対応していいか分からず途方に暮れているという情報も聞こえてきています。
また、豊富な知識と経験を持った、沈下修正の業者・職人はかなりレアなので限られていて、推測で400~500棟は家屋の改修をしなければならない中での人不足により、復興は長期化することは必死です。

行政の説明会には参加する

以上のような問題が存在していることを、被災者へ理解してもらい、復興の手順をスムースにするために、新潟市などの行政では、地域で説明会が開催されることでしょう。
こうした行政の動きをチェックし、正しい知識を手に入れ、全体の方向性を見極めましょう。

土地選びの教訓

洪水におけるハザードマップは、
土地購入の際にかなり重要視されていましたが、
液状化しやすさマップ」の重要性が増したように思います。

ここでは液状化の危険度が レベル4までに分類されて地図で色分けされている。

建築しようとしている場所が、どの程度のリスクがあるのか、ざっくりと把握することができます。

さらに、1964年に発生した新潟地震の際に生じた、液状化現象の履歴も公開されています。

 

しかし、「液状のしやすさマップ」で、危険度がレベル4だとしても、すべての土地で液状化がしているわけではありません。事実、今回は1964年で被害が甚大であった、新潟市東区での被害は少なかったです。また、被害も数十メートル離れただけでも、全く液状化の状況が違います。
液状化のしやすい傾向を、マクロ的に俯瞰する目的でこのMAPは使うといいでしょう。

昔の地形を調べよう

そこで、さらに細かく、ミクロ的な局所的に分析をしたいならば、オススメなのが、「今昔マップ」でピンポイントで過去の地形を調べることです。

黒崎の善久エリアは、かつて信濃川が流れていた土地であることは1910年の地図での地形で確認できます。

オーガニックスタジオの事務所も、同様にかつては信濃川の底だとわかりました。
幸い、地盤改良工事で鋼管杭を施工しているので、建物は傾斜していないけれど、この工事をしていなかったら、確実に不同沈下していたと思われます。

事務所のすぐ近くにときめき団地が、旧信濃川跡地に造成されている。1910年の地図では、川跡エリアの排水のための細い川があったことがわかります。

実際にときめき団地での被害は、この川跡の付近に集中していました。

教訓のまとめ

1:土地は過去の災害の歴史、地形の歴史を調べよう

2:被害想定地区では、地震保険の加入は必須です

 

相模 稔
代表取締役

相模 稔

オガスタの社長。 工務店経営のほか講演活動なども行う。 アメブロ「おーがにっくな家ブログ」もよろしく。

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