首都圏から三条市へ移住。自由な生き方を求め、夫婦でフリーランスに

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ゆったり広がる芝庭の奥に立つ三角屋根の家。杉板が使われた味わい深い外壁は、ファサードラタンと呼ばれるスノコ状の張り方が特徴だ。

JR北三条駅に程近い、三条市の中心近くにある石丸さん家族の家は、奥にある夫・大志さんの実家や周辺の家屋と調和するように、屋根には瓦を載せている。

5歳の長男、3歳の長女、1歳の次女の3人の子どもたちを育てながら、共にフリーランスとして自宅で仕事を行う石丸さん夫婦。

以前は首都圏で暮らしていた夫婦が、どのようにして三条市へ移り住み、家を建てるに至ったのか伺った。

 

東京での仕事を辞めて、2016年に三条市へ

「この家は僕の実家の敷地内に建てたんですが、僕はここ三条市で生まれ育ち、大学を卒業するまで三条に住んでいました。卒業後は俳優を目指して上京し、舞台で活動をしていましたが、舞台の仕事を辞めてからも東京でサービス業やさまざまな仕事をしていたんです。

当時ドラッグスターというバイクに乗っていて、2010年頃にバイクのツーリングイベントで妻と出会い、2014年に結婚しました。
2015年に妻が長男を妊娠したタイミングで、都心から妻の実家がある浦和へ引っ越したんですが、その頃僕が勤めていた会社の仕事が激務になり、だんだんと体調を崩していったんです。
2016年の3月に長男が生まれたんですが、その時が体調不良のピークで…。
子どもが生まれたばかりでしたが、仕事を辞め、休養を兼ねて家族で三条市に引っ越して実家で暮らすことにしたんです」と大志さん。

「私は浦和市(現さいたま市)出身で、社会人になってからは神戸で看護師として働いていたんですが、2011年に東日本大震災があったのを機に浦和に戻りました。
都心での暮らしに憧れていて、結婚する前の年に後楽園の近くで二人で暮らし始めたんですが、妊娠すると『郊外の方が子育てがしやすそう…』と思うようになり、ちょうど賃貸の更新のタイミングで浦和に引っ越したんです。

その後、先程主人が話したように、長男が生まれて2カ月した頃に三条に引っ越しました。
後ろ向きな気持ちでの引っ越しだったのですが、主人の実家の近くに並ぶ街路樹のハナミズキがちょうど満開期を迎えていて。そのきれいな景色が印象に残っています」と妻の麻衣子さんは話す。

そうして、2016年5月、生まれて間もない長男と3人、大志さんの実家に入って新しい暮らしをスタートした。

 

激務を経て、新しい働き方を考え始める

休養を取り、徐々に回復をしていった大志さんは、その年の冬に三条市内の会社に就職。
再び会社員として働く日常が始まった。

「三条の会社に就職をしたんですが、勤務地は約40km離れた新潟市内だったので、通勤時間が長かったですし、その翌年に新しいプロジェクトの準備が始まるとかなり忙しくなり、帰宅するのが深夜2時、3時が普通で、翌朝また早朝には出勤しなければならない日が続きました。
それでまた体調を崩し始めたんです」
と大志さん。

新しく始めた仕事も2017年の夏に退職し、再び休養を取ることにしたという。

「2017年10月に長女が生まれたんですが、長男の時のことを思い出しても、僕ら家族は子どもがこれから生まれるという時期に仕事が忙しくなったり体調を崩したりとトラブルが続いたんです。そのため、これからの働き方やそもそもの生き方をじっくり考え直したいと思うようになりました」

 

WEBの世界で、フリーランスとして活動を開始

現在は夫婦ともにフリーランスとしてWEBサイトの制作やWEB広告の運用を行っているが、元々は麻衣子さんがクラウドソーシングサービスに登録し、ライター業を始めたのがきっかけだったという。

「子育てをしながら家でもできる仕事を探していて、クラウドソーシングを使うようになったんです。そこで、看護師の資格を生かしてWEBの文章を書く仕事を始めました」と麻衣子さん。

組織に入らなくても仕事ができることを実感した麻衣子さんは、大志さんを誘い、2017年の秋以降は二人でフリーランスとして生計を立てるようになったという。

「やがて仕事を受けるだけではなく、発注する立場になりたいと思うようになりました。そこで、WEB上の教材で勉強をしたり、セミナーに行ったりして、WEBサイト制作や運用の知識をつけていったんです。そうしてWEBサイトをいくつか作り、閲覧数を伸ばしてWEB広告の運用をしていたんですが、今は付加価値が付いたそれらのWEBサイトを全て売却して、新たに別のWEB関連の仕事を始めているところです」と石丸さん夫婦は話す。

 

雑誌で見つけたオーガニックスタジオ新潟の家に一目惚れ

ところで、首都圏で暮らしていた時から家づくりを考えていた石丸さん夫婦は、三条で暮らし始めてからもネットで調べたり、住宅展示場を訪れたりしていたという。

「子どもたちが成長してきて、僕たちが過ごす実家の部屋が手狭になっていたんです。アパートを借りることも考えましたが、なかなか希望の物件が見つかりませんでしたし、せっかく住むなら新築で理想を叶えたいと思っていました」と大志さん。

そんな時に、住宅情報誌で見つけたオーガニックスタジオ新潟の「柳沢の山荘」の記事が目に留まった。

広い土地に立つその家には、大きな軒に守られたウッドデッキがあり、日常的に外の空気を味わいながら過ごすことができる。

柳沢の山荘2015年竣工)

「はじめは他の住宅会社さんも気になっていましたが、その家の写真を見てからはオーガニックスタジオ新潟さん一択になりましたね」と麻衣子さん。

実際にその家に見学に訪れると、真冬でもエアコン1台で快適に過ごせる高い断熱性能にも驚かされたという。「家の雰囲気も素敵でしたし、実家は石油ストーブを何台使ってもすごく寒いので、こんな快適な家に住めるならぜひお願いしたいと思いました」と大志さん。

徐々にフリーランスの仕事が軌道に乗り始めたこともあり、2020年の夏前の完成に向けて家づくりを進めることになった。

 

快適な住まいで、四季の変化を楽しむ暮らし

オーガニックスタジオ新潟の設計担当・山田剛さんとの打ち合わせでは、まず大きな紙に希望するものを全て書き出す作業から始めたという。
そのキーワードを元に山田さんがマインドマップを作り、要望を整理しながら図面化していった。

そうして完成したのが、ゆったりとしたLDKに、柳沢の山荘をオマージュした広いウッドデッキがある家だった。

一段下がったキッチンの奥はパントリーで、その先には仕事をするためのスペースがある。
LDKと繋がっており、家庭と仕事をすぐに切り替えられる便利な設計だ。

キッチンは家具のように空間になじむ木製の天板を採用しており、こちらも柳沢の山荘のオマージュ。子どもたちが一段高いダイニング側に立って料理の手伝いもしてくれる。

2階には浴室・洗面脱衣室などの水回りや、将来的に3つに仕切れる子ども部屋、主寝室、仕事部屋がある。

今はまだ子どもたちが小さいため、玄関横の和室に布団を敷き、家族5人で寝ている。

「以前は冬が苦手だったんですが、この家はすごく暖かくて。今年の冬はデッキよりも高く雪が積もりましたが、快適な部屋の中から雪景色を眺めるのが楽しみになっていましたね。夏は友人家族を招いて家で夏祭りをやりました。

写真提供:石丸さん

写真提供:石丸さん

キッチンでかき氷屋さんをしたり、庭にタープを張ってスーパーボールすくいをしたり。友人たちからも『リゾートみたい!』と喜んでもらえました。天気のいい日はデッキにクッションを出してワインを飲みながら過ごすのも気に入っています」(麻衣子さん)。

 

自由な働き方で、育児と仕事を両立

3人の子育てをしながら、夫婦ともに在宅で働くフリーランスの石丸さん夫婦。
その働き方のメリットを強く実感しているという。

「子育てをしながら自分で仕事をコントロールできるのがいいですよね。朝調子が悪ければ寝ていられますし、自分の体調に合わせて仕事ができるのは大きなメリットです」と麻衣子さん。

「隣が実家なので親にサポートをしてもらうこともありますが、僕らの場合は2人とも在宅なので、上の子2人を幼稚園に送り出した後は、下の子1人を夫婦2人でみることができます。どちらかが子どもの面倒をみている間はどちらかが仕事に集中する…という風に、お互いに役割を変えてフォローし合えるのがいいですね。そうすることで、育児も仕事もどちらかが頑張り過ぎてしまうことがありません」と大志さん。

食事の支度もどちらか一方が行うのではなく、夫婦2人の役割として捉え、状況に応じてそれぞれが担う。夫婦で一緒に過ごす時間が長いため、将来のことを話し合うことも多いという。

 

自然との距離の近さが三条暮らしの魅力

2016年の春、不安を抱えながら首都圏から三条へと移り住んだ石丸さん家族だが、
その後、長女と次女が生まれ、2020年には理想の住まいが完成した。

5年前に三条に来た時、鮮やかな満開の花が印象的だったというハナミズキの木は新居の庭にも植えられ、春の訪れを知らせようとつぼみを膨らませている。

「三条に来た時は車の免許を持っていなかったので、電車の本数が少ないことなどに不便さを感じていましたが、車の免許を取ってからはすごく便利だと思うようになりました。
ラフな服装で出掛けてもドライブスルーでスタバの飲み物が買えますし(笑)。

あと、三条の人はすごく親切なんですよ。市日には高架下に露店が並ぶんですが、妊娠中に行ったら野菜を売るおばあちゃんが優しく声をかけてくれたりしました。
家の近くでキジが歩いていたり、冬になれば白鳥の群れが空を飛んでいたり、車で少し走れば蛍を見に行けたりと、自然と接することが多い環境は子育てをするのにも魅力的です。
逆に、情報が多すぎる都会での生活にはもう戻れないかもしれないですね」と麻衣子さん。

大志さんはインスタグラム(@daishipapa)で夫婦のパートナーシップや子育てに対しての考え方を発信し続け、2021年4月現在フォロワーは2万人を超えている。

「今後は『しあわせ家族学』というこれまでの経験をもとにしたサービスを立ち上げ、育児や夫婦関係に悩んでいる人に向けた事業を展開していきます」と次の挑戦について話す。

結婚、転職、引っ越し、育児、独立と、目まぐるしく人生が動いた数年を経て、三条に根を張って生きていくことを決めた石丸さん夫婦。

WEBビジネスを行う在宅のフリーランスという新しい働き方を実践し、
人口10万人弱の三条市という程よい地方都市での暮らしを楽しんでいる。

写真・文 Daily Lives Niigata 鈴木亮平

「家族の歴史を紡ぐ」北三条の家
延床面積 120.64㎡(36.50坪)
家族構成 夫婦+子ども3人
竣工年月 2020年7月 新潟県三条市

家族の歴史を紡ぐ「北三条の家」