前回のコラムで、「新潟の夏が暑すぎるので、いったん新潟から逃げます」という話を書きました。
とはいえ、新潟には、その暑さを帳消しにしてくれる夏のイベントがたくさんあります。
毎年、「もう無理」と言いながら、結局また出かけてしまう。
今回は、そんな「暑い。でも行く」を繰り返してしまう、新潟の夏の話です。

苗場には魔物がいる
新潟に移住すると決まったとき、真っ先に思ったのが、
「新潟にはFUJI ROCKがある!最高!」
でした。
そう、日本最大級の音楽フェス「FUJI ROCK FESTIVAL」は、新潟県湯沢町・苗場で毎年開催されています。
ただし、開催は真夏。
しかも山の天気はまったく容赦がありません。
さっきまで汗だくだったのに、突然の土砂降りで気温が一気に下がる。
今度は凍える。足元は泥だらけ。
汗、泥、雨。気づけば自分が何由来の水分で濡れているのか、よくわからない。
子どもが生まれる前は、キャンプをしながら3日間参加していました。
朝から晩まで遊び尽くし、暑さで判断力がゆるみ始めると、「この川、もはや洗面所では?」という境地にたどり着きます。
まさにサバイバル。
「どこでもドアで今すぐ家のベッドで眠りたい」
と思うのに、フェスが終わる頃には、
「また来年もここに来るために頑張ろう」
と思っているのだから不思議です。
あれはもう、音楽の力というより、人間の記憶を都合よく改ざんする何かが苗場にいるのだと思っています。
そして今年。
子どもを産んでからずっと参加を見合わせていましたが、初めて子連れでFUJI ROCKに行ってみました。
子どもたちは、ずぶ濡れになりながら踊る大人たちを、不思議そうな顔で見ていました。
その景色を見ながら、私は思ったのです。
「何歳になっても、こんなふうに全力で遊んでもいいんだ」
ということを、言葉ではなく景色で見せられる場所が、FUJI ROCKなのかもしれない、と。

▲子供達も大喜び、KIDS LANDのメリーゴーランド。
花火を見て泣くなんて
新潟の夏といえば、日本三大花火のひとつ「長岡花火」も外せません。
こちらも、暑さを我慢してでも行く価値のあるイベントです。
実は私は、花火にまったく興味がありませんでした。
特別行きたいと思ったこともありません。
そんな私が一昨年、花火好きの母に見せてあげたいという気持ちから、初めて長岡花火を見に行きました。
もう、衝撃でした。
花火がこんなにも「人の感情を動かすもの」だったなんて。
日頃うまく放出できていない感情が、花火と一緒に空へ上がって、どこかで爆発していくような感覚がありました。
興奮なのか、解放感なのか、それとも日頃どこかに置き忘れていた感情なのか、自分でもよくわかりません。
でも、気づいたら泣いていました。
長岡花火は、「きれいだね」で終わる花火ではなく、人の中に眠っていた感情を、静かに呼び起こしてくる花火なのかもしれません。
▲私の写真がショボすぎて長岡花火の凄さが全然伝わらない(笑)
ビールより空気を飲みに行く
そして夏の終わり、毎年楽しみにしているのが、長岡市のアオーレで開催される「ビール展」です。
暑い中、毎年のように出かけています。
というか、暑いから行くのか。暑いからビールが美味しいのか。
もう、自分でもよくわかりません。
会場では全国各地のクラフトビールを楽しめるだけでなく、食事ブースや子どもが遊べるコーナーもあります。
もともとはクラフトビール好きの夫の付き添いで行き始めたのですが、気がつけば毎年、友人たちも合流して、昼から夕方まで食べて、しゃべって、子どもたちは遊び、大人たちはときどき乾杯して、またしゃべる。
昼間からビールを飲んでいる人たちは、だいたい機嫌がいい。
「久しぶり!」から始まって、そのまま同じテーブルを囲む。
そんな時間が、なんだかとても好きです。
私はたぶん、ビールそのものより、あの「みんなが少しだけご機嫌な空気」を味わいに行っているのだと思います。

▲私は飲むより、食べる専門。
大人になるのも悪くない
移住して子どもを育てていると、「自分だけ遊びに出かけたい」と思っても、気軽に預けられる人はいません。
もちろん、子どもがいるからこそ、昔のように何も考えず遊ぶことはできません。
でも、子どもがいるからこそ見える楽しさも増えました。
だから私は、基本的に子どもも一緒に連れて行きます。
友達みんなで自然と子どもの世話をしてくれて、一緒に遊んでくれて、気づけば子どもたちもとても楽しそうにしています。
誰かひとりが頑張るというより、みんなで少しずつ子どもを見て、みんなで少しずつ楽しむ。
そんな時間に、私は何度も助けられてきました。
FUJI ROCKで泥だらけになって笑う大人。
長岡花火を見て本気で泣く大人。
ビール展で昼からご機嫌に語り合う大人。
そんな大人たちを見て、子どもたちにも「大人になるって、そんなに悪くないな」と思ってもらえたらいいな、とは思います。
……まあ、これは私が遊びに行きたいことを、ちょっといい話に変換しているだけかもしれません。
でも、子どもがいるから遊びを諦めるのではなく、子どもがいるからこそ一緒に楽しめる方法を探す。
今の私にとっては、それも新潟で暮らす楽しみのひとつです。
新潟の夏は、たしかに暑い。
でも私は来年もきっと、「暑い。でも行く」を繰り返します。
子どもたちがいつか大人になったとき、「大人って、けっこう楽しそうだったな」と思ってくれたら、それで十分です。
(……まあ、毎日ご機嫌でいるのは、親側の難易度がかなり高いのですが。)

まだまだ暑い日が続きますね。
このコラム、実は「今、自分が書きたいこと」をかなり自由に書いています。
ありがたいことに、時々読者の方から感想をいただくことがあって、「あ、ちゃんと読んでもらえているんだ」と毎回うれしくなります。
連載はまだ続く予定なので、「こんな話も読んでみたい」「これについて書いてほしい」などがあれば、ぜひインスタのDMで教えてください。
次のコラムのネタになるかもしれませんし、私が「それ、めちゃくちゃ書きたい!」と急にやる気を出すかもしれません(笑)
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