OWNERS LIFE

くらしを訪ねて

程よい距離感の「ほぼ完全分離型」2世帯住宅で、助け合いながら暮らす

admin

住宅が密集する三条市西四日町は、迷路のように細い道が入り組んだ昔ながらの住宅街。この街の角地にあるY邸は2016年に新築した建物で、以前ここには築50年超の家が立っていたという。

かつての住まいは2004年に起こった「7.13水害」で浸水被害を受けており、それによる建物のダメージもあった。

新築した建物は玄関が別々に設けられた二世帯住宅。中央の和室が唯一の共有スペースで、そこを介して2つの世帯を行き来できるが、それぞれの世帯が干渉することなく独立した生活を送れる「ほぼ完全分離型」だ。

向かって左側が親世帯の居住スペースで、ご主人のご両親が暮らす。右側がご主人と奥様、小学校4年生と1年生の子どもたちの4人で暮らす居住スペースだ。

 

実家の古い家と車庫を解体し、新築の2世帯住宅に

「僕たちは2010年に結婚してから三条市内のアパートで暮らしていました。やがて子どもたちも成長してきたので、新しく土地を買って家を建てるか、僕の実家で一緒に住むかを考え始めたんです」とご主人。

その後両親と相談し、老朽化した実家を建て替えて2世帯住宅で暮らすことに決めたという。実家の土地は100坪弱。ご主人の祖父の時代には、銘木の一枚板を使ったテーブルなどを作る工場を営んでおり、敷地内には住居と工場の2つの建物が建てられていた。工場はご主人の父の代でやめて、それからは車庫として使っていたという。

「2004年の水害の時に、家の1階部分が水に浸かったんですよ。当時僕は学生でこの家に住んでいたんですが、水害後は床下の断熱材を外して住んでいたので冬になるとすごく寒かったんです。建物も少し傾き、ビー玉を置くと転がる程でした」(ご主人)。


2004年の水害時の様子。(Yさん提供)

他の住宅会社も見に行ったが、オーガニックスタジオ新潟で家を建てて暮らしていた職場の先輩の薦めで、オーガニックスタジオ新潟を知ったという。

「その先輩が断熱性能の高さや床下暖房の快適さなどを細かく教えてくれて、当時新潟市西区の小新にあったモデルハウスに見学に行きました。冬でしたが、先輩が話していたようにとても暖かくて『いい家だね』って妻と話していましたね。その後に先輩の家にも見学に行き、そこでも快適さを実感しました。両親も寒い家で我慢を強いられてきたので『暖かいこと』が何よりも大事でしたし、たくさんの住宅会社を見るほどに迷って決められなくなると思い、その後すぐにオガスタさんに依頼したんです」とご主人。

20132017年に活用されていた「オガスタ スタンダードモデルハウス」(新潟市西区小新)。

 

仏間を緩衝地帯にして、プライバシーを確保

二世帯住宅を建てる上で、まずは、どこまで空間や設備を共有するのか?はたまた分離するのかを決める必要があるが、最初に分離型を希望したのはお母様だったという。

「『2世帯住宅だけどお隣さんがいいよね』と母が最初に言っていました。オガスタさんの施工例の中に2つの建物が並んだ2世帯住宅もあったので、そういうのもいいんじゃないかと思い、その方針で進めることにしたんです」(ご主人)。

敷地には車4台の駐車スペースを確保し、左右に分かれる形の分離型2世帯住宅を希望。仏壇を置くための和室を1室設けることも要望に加えると、設計を担当したオーガニックスタジオ新潟の阿部誠治さんは2つの世帯の建物の間に仏間を配し、そこを通って互いの居住スペースを行き来できるプランを提案した。

普段あまり使われることのない和室を緩衝地帯とすることで、互いのプライバシーをしっかりと確保でき、そこを連絡通路にもできるという考え方だ。

「和室は妹家族が泊まる時や、盆・正月にお寺さんがいらっしゃる時に使っています」とご主人。「あとは私が自宅でリモート会議をする時にこの和室を使うことがあります。両方の家から切り離されているので、仕事をする場所としても都合がいいんですよ」(奥様)。

 

ゆったりとした2階リビングがある子世帯

子世帯の建物は敷地西側にあり、住宅密集地の中で光を採り込みやすいようにLDKは2階に配置。1階は個室と水回りなど、2階と比べて細かく区切られた間取りになっている。

玄関を開けると廊下が伸びており、階段下には子どもたちが並んで勉強できるスタディーコーナーが。階段を一段上がったところには和室につながるドアがあり、ここが親世帯の建物へと繋がる通り道になっている。

廊下の隣は子ども部屋とウォークインクローゼット。

夫婦の寝室はウォークインクローゼットを通り抜けた奥に設けられている。

そして、階段を上がった先にはワンルームのLDKが広がっている。

リビングはリズミカルに並ぶ梁が印象的な空間で、高めに配した連続窓は、プライバシーと採光のバランスを考えて設けられたもの。

南側一面だけでなく親世帯側(東側)も1間(約180cm)幅の窓にすることで、コーナー部分の開放感を高めている。

さらに3畳の小上がり、ダイニング、キッチンと、一つの空間にさまざまな居場所が配されているのも特徴だ。

堅木の無垢フローリングと調和するように、カップボードや棚、ベンチなどが造作されているため、随所に木の温もりが感じられて心地いい。

「あれこれ注文するよりお任せした方が良いものができると思い、間取りの希望などは出さずにご提案して頂いたんです。暖房は灯油ボイラーで温水をつくり、1・2階の床下に設けた放熱器で温める仕組みになっています。冬本当に寒い時はエアコンも使いますが、それ以外はこれだけで快適に過ごせていますね」(ご主人)。

 

生活領域を分けつつ、何かあれば助け合う

実際に分離型の2世帯住宅で暮らして感じているメリットについて伺った。

「うちは男の子2人なので、飛んだり跳ねたりして音を出すことが多いですが、親世帯と離れているため、音の心配をする必要がないのがいいですね。互いの生活音はほとんど聞こえない一方、子どもを見て欲しいときなどはすぐに頼れるのでとても助かっています。あとは、料理をもらったり、不在の時に届いた荷物を預かってもらえるのもありがたいです。ただ、必要以上にべったり頼るような関係は良くないと思っているので、子どもたちがおじいちゃんおばあちゃんのところに行って長居していたら注意することもあります」とご主人。

では、逆にデメリットはあるのだろうか?

「生活をする上でのデメリットは思いつきません。ただ、分離型にしていることで、光熱費や建築費用、メンテナンス費用などは共有型よりも高くなりますから、そこがデメリットでしょうか。給湯などの設備関係は同じ時期に寿命を迎えるでしょうから、そこでかかる費用は大きいですよね」(ご主人)。

また、数十年後に世代が変わっていく時、2世帯分の家をどのように活用していくか?というのも将来考えなければならない課題だという。

 

大きな吹き抜けがある1階リビングの親世帯

次に親世帯の居住スペースを訪ねた。

親世帯は玄関で靴を脱ぎ正面の引き戸を開けると、そこにワンルームのLDKが広がっている。採光のためにリビングの上部を吹き抜けにしており、2階の窓からたっぷりと光を採り込めるプランだ。

モンステラやパキラをはじめとした観葉植物が随所に置かれ、室内に彩りを添えている。水を入れたコップに茎を挿す「水挿し」で、観葉植物をさらに増やしているという。

壁に掛けられたタペストリーやソファに置かれたクッションカバーは、お母様による手織りのもの。

リビングの一角にはコレクションケースが置かれており、その中にはお母様が作ったビーズ作品が並んでいる。

 

若世帯がそばに居ることで得られる安心

息子さん家族と暮らす2世帯住宅に建て替えをした経緯をお母様に聞いてみた。

「2世帯住宅を建てるのに十分な広さの土地でしたので、息子夫婦がアパートを出て家を建てようと考えている時に、『ここに建ててもいいよ』と話しました。それに、元の家が水害で傷んでいましたし、冬になると床がすごく冷たくて。あと、家の隙間から入ったハクビシンが天井裏に住み着くようになって、さらに子どもも生んで騒ぐようにもなっていたんですよ。リフォームをするよりも建て替えた方がいいなとも思っていました。私たちも年をとってきたので、息子家族が近くに居てくれると安心感がありますし」とお母様。

「2世帯にするなら、家のどこかで繋がっていても、住む場所は分かれていた方がいいと思って、このような建物にして頂いたんです。夕食の時間だったり、生活リズムがそれぞれ違いますから」と続けた。

では、この分離型の2世帯住宅の暮らしはどんなものなのだろうか?

「和室を一部屋挟んでいますから、孫がボールで遊ぶ音がかすかに聞こえる程度で、それ以外の音はほとんどしないですね。同じアパートで別々の部屋に住んでいるような感じです。互いに自分たちのペースで暮らせるのはいいですね。その一方で、私が膝や足首をケガすることがあったんですが、リハビリの時には息子たちにサポートをしてもらえてとても助かりました」とお母様は話す。

普段の日常はそれぞれのペースで暮らしつつも、何かあればすぐに助け合える。そんな分離型の住まいのメリットを感じながら暮らしている。

 

手仕事に打ち込めるゆとりも確保

1階の階段脇には籠もり感のあるワークスペースが設けられているが、こちらはお母様の作業スペース。

ここでビーズのアクセサリーを作っており、着物で使う帯留めなどの一部作品は呉服屋に卸して販売も行っているという。

階段を上がった2階は、寝室とホール、ウォークインクローゼットが配されており、ホールには足踏み式の機織り機が置かれている。

「機織りは無心になってできるのが面白いですね」(お母様)。

吹き抜け越しに見える部屋が寝室。

障子によって緩やかに仕切ることができ、開放すれば1階と一体になる。

「前の家は冬に寝ていると息が白くなっていましたし、結露で窓が濡れ、カビも出ていました。今は家中が暖かく、冬でも薄着で過ごせるようになりましたし、電気毛布もいりません。結露やカビに悩まされることもなくなりましたし、光熱費も安くなりましたね」とお母様は満足そうに話す。

 

大切なのは家族みんなでじっくり話し合うこと

最後にご主人に2世帯住宅を検討している方へのアドバイスを伺った。

「上下階で分ける2世帯住宅でどれくらい音が気になるものなのかは分かりませんが、左右に分けたことでとても快適に暮らせています。僕たちは和室以外の全てを分けていますが、考え方によっては『お風呂は1つでいい』という答えもあるでしょう。誰かが我慢をするのはよくないので、家族みんなで話し合うことが大事ですし、もし理想的な形にならないようであれば必ずしも2世帯住宅にこだわる必要はないとも思います」(ご主人)。

単世帯とは異なるメリット・デメリットがある2世帯住宅。Yさん家族の住まいでは、普段使わない和室を連絡通路にする「ほぼ完全分離型」でバランスを取っており、ストレスのない暮らしを実現している。

2世帯住宅について検討中の方は、ぜひ参考にしてみては?

 

写真・文 Daily Lives Niigata 鈴木亮平

 

「和室で繋がる完全分離二世帯の家」西四日町の家
延床面積 206.98㎡(62.62坪)
家族構成 夫婦+子ども2人+両親
竣工年月 2016年12月

 

和室で繋がる完全分離型二世帯の家「西四日町の家」

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